パリ クチュール:「ヴェトモン」、政治的かつパーソナルなファション

 デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)手掛ける「ヴェトモン(Vetements)」が、パリ クチュール期間中に2019年春夏コレクションを発表した。彼はグルジア(現ジョージア)から南オセチア紛争の戦火を逃れ移民してきたというバックグラウンドを持つが、奇しくも現在開催中のワールドカップでは、ロシアチームが勝利を目指して奮闘しているところだった。

Vetements Spring/Summer 2019 Menswear - Photo: PixelFormula

 今回はトビリシでストリートキャスティングを行い、40名の若いジョージア人を集めてモデルに起用。キリル文字のメッセージやソビエト連邦のエンブレムなど、強いテーマを感じさせるアイテムが多数登場した。
 
「今までで一番パーソナルな提案だと思う。いつかこういうコレクションをやらないと、自分に自信を持っているとは言えないんじゃないかって。僕は10歳で難民になった。生家は爆撃されたんだ。自国でも難民だったんだよ」と語る。ちょうどその瞬間、モスクワのワールドカップでは、ロシア対スペイン戦でペナルティーキックが始まろうとしていた。ヴァザリアがまだ幼い頃、故郷のアブハジアがグルジア独立に端を発する内紛に参戦したことで、一家は西ヨーロッパへ逃れることになった。
 
 パリの外周を囲む環状道路の下、ハードロックをメインにした選曲のBGMに乗せてショーが始まった。オープニングの肌に張り付くようなカットソーにはクレムリンと聖母子像が描かれているが、これはソビエト時代からの囚人の刺青を想起させる。また、Tシャツに合わせていたオーバーサイズコートの肩パットは、祖母にインスパイアされたものだ。パーカにはフェティッシュなチョーカーと巨大なスパイクのついたスニーカーをスタイリング。さらに、カットしてから後ろでドッキングしたグレーのジーンズ、カモフラージュジャケットとショーツにバラクラヴァを合わせたルックなども登場したほか、スポーティーなスキーパーカにはロシア、トルコ、ウクライナ、アメリカ、そしてジョージアの国旗のカラーを取り入れていた。クールでありながら、アグレッシブでもあるコレクションだ。
 
 「ただ洋服を作るのとは全く違った作業だ。そして自覚したのが、僕は物語を、自分自身の物語を語る必要があるってこと。ショーというよりは映画の方が近いかもしれない。複雑な歴史を持つ祖国、自分のルーツに立ち返ったんだ。オーバーサイズの洋服は、僕らより裕福だった従兄弟のお下がりを着ていたことから来ている。当時はファッションの存在も知らなかったね!」とヴァザリアは話してくれた。

 

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