パリ ファッションウィーク:「オフ-ホワイト」の "ジェントリフィケーション"

 「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(Off-White c/o Virgil Abloh)」がパリで行ったショーは、会場の前に既に大きな人だかりができていて、まるでノアの箱舟にでも乗り込むような心地になった。

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Off-White - Fall-Winter2018 - Womenswear - Paris - © PixelFormula
 
 中には「オフ-ホワイト」コミュニティなるものが待ち受けていた。パリで孤立した移民の若者を集めたサッカーチーム「Melting Passes」のメンバーが、フロントロウに座っている。アブローは彼らのユニフォームのデザインも手掛けた。
 
 インビテーションには 「ウェストビレッジ」とあったが、馬に乗った紳士が描かれているところを見ると、ヨークシャーの「ウェストライディング」とでも言った方が良さそうだ。
 
 会場内に足を踏み入れると、外とは違う混沌が見てとれた。一人の男性が駆け回っては、「座ってください!座らないとショーが始められません!」と叫んでいる。ようやくショーが始めると、天井の照明が落とされ、モデルがキャットウォークに現れた。
 
 コレクションはやはり田舎の風景を思わせる牧歌的なもので、英国の大地主階級が静かな暮らしを満喫しているような、タペストリードレスが数ルック続いた。乗馬に使うサドルブランケットのような素材を使ったケープも登場している。
 
 フィナーレにも田舎のウェディングといった雰囲気が漂ったが、それでも全てが上質なストリートウェアであることを忘れていない。メタルメッシュのスカートや、ワンショルダーカクテルと乗馬ブーツを合わせたルック、そしてブランドのロゴを覗かせたトラックトップの数々がアクセントになっていた。足元には、「ナイキ(Nike)」とのコラボスニーカーやシルクスカーフのストラップをあしらったハイヒールをスタイリング。BGMにも、ウォーの定番、「The World Is A Ghetto / 世界はゲットーだ!」が流れる。
 
 アブローは大きなスタンディングオベーションに迎えられ、観客に礼をしていた。「Melting Passes」のメンバーも間近に見守る。アブロー自身も、ガーナからアメリカへと渡った移民の両親のもと、シカゴに生まれた。まさに新しいアメリカンドリームを体現する存在ではあるが、古き良きイングランドの「Yankee」文化に対する憧憬のようなものも感じられる。ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)が随分昔に生み出した文化だ。
 
 パリの主要なランウェイショーの中で、これほどまでに観客に新しい顔が集うのは珍しい。これもアブローの魅力の一つだ。新しい消費者による新しい世界を構築する能力がある。今こそ彼の時代だろう。

 

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