「トム・ブラウン」を世界的ブランドに押し上げるロドリゴ・バザンCEO

 今や押しも押させぬ成功を手にした「トム・ブラウン(Thom Browne)」。3月5日にはパリでランウェイショーも控えている同ブランドだが、元はニューヨークのミートパッキング・ディストリクトにある小さな工房で、私立学校の制服を生産していた。現在ではかなりの影響力を持つアメリカンブランドの一つであり、業績の伸びも目覚ましい。そして2年前、アルゼンチン出身のロドリゴ・バザン(Rodrigo Bazan)がCEOに就任した。

Rodrigo Bazan - Photo: Thom Browne

 「トム・ブラウン」の急成長の裏には、バザンCEOの影がある。以前「アレキサンダー・ワン(Alexander Wang)」でトップを務めていた同氏は、2016年5月1日付で「トム・ブラウン」に入社した。
 
 「金曜の夜に辞めて、次の月曜の朝には新しい職に就いていた。しかし、きちんとリサーチはしたよ」とバザン。「トム・ブラウン」の過去のショーを見るため、二度の週末をすべて費やしたという。
 
 就任から3ヵ月には事業拡大計画を提示し、ダイレクト・トゥ・コンシューマーを核とした。当時は売上高の75%を卸売事業が占めていた。現在、世界中にメンズ300店舗、ウィメンズ200店舗の卸先を持つ。しかし単独店においても、日本と韓国で旗艦店やテナントを出店し、今日では29店舗を展開している。2016年には売上高1億ドルに到達し、翌年は25%の増収となった。
 
 「小売の販売網を構築して卸売事業を補完することで、より持続的な成長が見込める。それに、我々は世界各国で事業を展開していて、北米が30%、欧州が40%、そしてアジアが30%となっている」とバザンCEO。
 
 「必ずしも巨大な店舗である必要はないんだ。ミラノではフォーシーズンズの隣の、素晴らしいロケーションに大きな路面店を開くことができたけれどね。適切な規模で、テクノロジーと組み合わせられるようなものが欲しい。ニューヨークの店はウィメンズが置けるように拡張したし、日本市場にも積極的に取り組んでいる。日本には、ウィメンズのテナントを更にオープンするつもりだ」。
 
 「2年間で、16店舗が29店舗にまで増えた。全てにおいて収益性は高いよ。どの店舗もね!」。
 
 アルゼンチンで生まれたバザンは、サンディエゴのUCSDで学んだ後、ロンドンへ渡りモトローラ(Motorola)に入社した。
 
 2001年に『タイム(Time)』誌でドメニコ・デ・ソーレ(Domenico De Sole)とトム・フォード(Tom Ford)の特集を読み、ラグジュアリー業界に惹かれるようになる。「素晴らしい才能を備えたデザイナーと、ヴィジョンを持ったCEOが、倒産した会社を蘇らせている。そう、『グッチ(Gucci)』という会社だ」。
 
 その3ヶ月後には、フィレンツェにあるグッチ・グループ(Gucci Group)で財政顧問を務めるようになった。グループは大きく事業を拡大している時期で、「ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)」の合弁会社設立や、「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」や「バレンシアガ(Balenciaga)」といったブランドも取得した。1年足らずでロンドンの「アレキサンダー・マックイーン」のCEOに任命された。当時、バザンは若干27歳だった。
 
 店舗の運営や卸売の営業チームを率い、ライセンス事業も担当したが、2007年にはライバルグループのLVMH傘下にある「マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)」の欧州事業を手掛けるために退任した。デ・ソーレとフォードがフランスのオーナーによって「グッチ」を追われてから、3年が経っていた。
 
 2010年には「アレキサンダー・ワン」の社長として、家族経営の事業にプロのメソッドをもたらした。店舗数をゼロから27店にまで増やし、ECを開始したほか、「H&M」とのコラボレーションも実現させている。
 
 現在、バザンCEOはニューヨークのトライベッカに住んでいる。「トム・ブラウン」の店舗にほど近い場所で、本社は7番街にある。
 
 「ファーフェッチ(Farfetch)」とも戦略的提携を結んだ同氏だが、何と言ってもパリにショー発表の場を移したことは大きい。
 
 「ブランドにとって重要な一歩だった。パリの方が受け入れられると思ったんだ。我々のビジネスの70%は北米の外でのものだし、ニューヨークで長く過ごさないバイヤーやプレスにも届くからね」とCEOは説明する。
 
 パリ国立高等美術学校で開かれた前回のショーは、ウィメンズデザインチームのエレガンスを物語るものだった。
 
 トム・ブラウンは2001年に自身のブランドを立ち上げ、CFDAのメンズデザイナー・オブ・ザ・イヤーには2016年と2013年の二度に渡って選ばれている。2016年、日本のストライプインターナショナル(旧クロスカンパニー)は、アメリカのサンドブリッジ・キャピタル(Sandbridge Capital)と資本業務提携する名目で、同社へ「トム・ブラウン」の支配株を売却した。サンドブリッジのマネージングパートナーであるケン・サスロー(Ken Suslow)が「トム・ブラウン」会長を務めるが、サスローは「デレク・ラム(Derek Lam)」、「ロシニョール(Rossignol)」、「トップショップ(Topshop)」、「カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)などにも関わった実績がある。

 

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