2017/09/28
パリ ファッションウィーク:地に足のついたクールな「クロエ」
2017/09/28
一歩「クロエ(Chloé)」の本社に入ると、中は通りの喧騒とは一変して、静謐なオアシスが広がっている。9月28日の午前9時、エディターは皆ナターシャ・ラムゼイ=レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)が手掛ける「クロエ」のショーを目にしようと集まった。
デザイナーはしばしばメゾンのコードに忠実にあろうとするあまり、隷属的になってしまうこともある。しかし、ラムゼイ=レヴィは明らかにそれを味方につけていた。まだ初々しさは残るものの、今回のコレクションには、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)、マルティーヌ・シットボン(Martin Sitbon)、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)といった歴代のデザイナーはもちろん、創業者のギャビー・アギョン(Gaby Aghion)の面影も感じ取ることができた。
カッティングはクリーンでミニマルだが、それでいて軽やかさを残している。プレーリードレスは、硬めのレースがパワーショルダーのシルエットを形作り、サマーフロックドレスには花のプリントが躍った。特に目を引いたのは、スネークプリントのシルク、大胆な単色使い、そしてレースを素晴らしいバランスでミックスしたカクテルドレスだ。他にも、ベルベットスーツは美しく、「クロエ」のクラシックなシグネチャーでもある跳ね馬のモチーフをあしらったアイテムも。ファインレザーのマニッシュコートは、コレクション全体に漂っていた70年代ムードを高めていた。
「すごくシック。軽やかだけど強い。とても気に入ったわ」とシットボン。
際立つような新しさはなく、モードな側面は強くなかったが、業界人が「クロエ」に求めるのはそんなものではない。ギャビー・アギョンは、すべての女性に向けて服を作ろうとメゾンを立ち上げたのだ。
「まずアーカイブに行くことから始めた。『クロエ』に対する愛を余すところなく表現したかったの。歴代のデザイナー達にもね。分け隔てなく皆好きよ。ギャビーはデザイナーを見出して、機会を与えてきた。カール以前にも彼女は色々なデザイナーと仕事をしてきたし、それを裏切るようなことはしたくなかったの。私にとって、ファッションは自分の人間性を表現する手段。服を着ることで世界と対話し、自分に自信を持って、勇気づけられるのよ。だから、女性は皆強い存在だと感じている。それを服で見せたかった」とラムゼイ=リレヴィは話す。以前は二コラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)のもと、デザインディレクターとして「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」で15年間腕を振るった。
確かに、今回のコレクションにも「ヴィトン」時代の影響は表れているように思われた。シルエットやカラーパレット、そして溢れるパリジャンムードは素晴らしい。けれど、「クロエ」の服はより着易く、女性的で、正直に言えばこちらの方がそういう意味で優っている気すらする。つまり、商業的な成功を見込めるクールなヒットだ。
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