2016/03/17
三越伊勢丹HD大西洋社長に聞く(下) SPA事業とEC拡大
2016/03/17
パリにアンテナショップをオープンする三越伊勢丹ホールディングス。SPA事業やEC拡大も注目される。日本米百貨店協会の次期会長にも選任された大西洋社長に、今後の国内外での展望を聞いた。
――日本国内でのこれからの戦略は?
日本ではやはりEC市場が非常に発達していますので、これからそこに参入していくというのはあります。勿論リアルな店舗の価値が無くなるとは思いません。実店舗とオンラインとの融合のような形態を今色々と展開しています。
――SPA事業に関しては?
今、SPA商品のバランスが17~18%まできたので、これを25~30%くらいに持っていきたいですね。全ての商品カテゴリを手掛けていますが、特に婦人用品や婦人靴といった分野で成功事例として出てくると良いなと考えています。婦人靴や紳士用品、リビング用品といった商品では既に成果が表れています。いわゆるプライベートブランドとは少し違って、ブランドには囚われず、とにかく自分達で素材の手配から売り切るところまでやる、という仕組みですね。これからはそういう仕組みがないと、価値のあるものをお客様に提案できないなと。
――日本の産業の仕組みはどう変わってきていますか?
昔のサプライチェーンにおいては、製造や卸、小売といった役割分担が細かく分かれていました。しかし今の時代、素材業者や生産者と直接接触できるので、ノウハウ自体も自社の中に取り込めるようになったかと思います。
――EC事業は?
現在のところ、会社全体の中で考えると、ECの売上が占める割合はまだ1%といったところです。ただ、商品や物流が揃い始めて、20%ずつと速いスピードで伸びてきてはいますね。将来的には全体の10%を占めるところまで伸ばしたいと考えています。今日の小売市場のうち15%をECが占めていますが、我々もそちらを早期に拡大していけるよう、今漸く仕組みを整えたところです。また、海外戦略は今後インターネット無しに語れないので、海外に対してのウェブ対策というのは、今年中にでもトライアルとしてスタートさせていきたいなと思っています。いきなり欧米は難しいですが、中国や東南アジアなどでの越境ECというのは考えています。
――16年の見通しは?
日本の消費は、今非常に厳しい状況です。しかしこの逆境をチャンスととらえていますし、例えば先ほど話したように、EC事業などには大きな伸びしろがあると考えています。それから、当社は現在、ものづくりから小売までというサプライチェーンの改革に乗り出していますので、このスピードを更に速めていきたいですね。また、日本の顧客のニーズは非常に多様化しているので、百貨店事業だけにとどまっていれば、企業の成長は止まってしまいます。ウェディングや食品、レストラン・カフェといった他の事業の基盤も作っている最中で、数年後に成果を出していければと思っています。ですので、百貨店事業に関してはSPAによる収益力向上が、そして伸びしろのあるEC事業では、まだ手つかずの部分を開拓していくことが目標です。
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