2017/10/26
世界のラグジュアリー市場、2017年は5%増で回復傾向
2017/10/26
ここ2年ほど停滞していたラグジュアリー市場だが、2017年は消費者心理が上向き、欧州へ観光客が戻ってきたことに加え、中国経済の大きな成長によって、回復の兆しが見え始めた。また、ミレニアル世代とオンラインでの消費も後押しし、高級財市場におけるECの売上は24%増と、他の販売チャネルに比べて一番の伸びを記録している。
イタリアの高級ブランドで構成される団体「アルタガンマ(Altagamma)」と、ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)が発表した見解によると、レザーグッズ、ファッション、時計、ジュエリー、香水、コスメといった高級財を扱う世界のラグジュアリー市場の規模は、2017年には2620億ユーロ(約35兆600億円)に達するという。前年から横ばいだった2016年と比較すると、現行為替レートで5%増という数字になる。ちなみに、その前の2015年は前年比1%増だった。恒常為替レートで換算すると、2017年の市場規模は前年比6%だ。
「今年は非常に健全に成長している。過去には一度大きく伸び、そこから2年間停滞が続いたが、産業全体が持ち直してゼロの状態になったという印象だ。それこそ"再起動"ボタンを押したように」。レポートの著者でベイン・アンド・カンパニーのパートナー、クラウディア・ダルピツィオ(Claudia D’Arpizio)はこう話す。
それぞれの市場で全く異なった価格設定を行い、ロゴ好きの中国人客に媚びて現地の顧客の不興を買っていたブランドは、しかし戦略を見直し始めた。その結果、今日では現地の顧客が戻り、売上は4%と伸びている。さらに、欧州と中国における価格差は20~30%程度に抑えられているが、観光客は欧州に戻りつつあり、世界中の高級財に対する消費は6%増加することになった。
「以前は価格が主な購買の動機だった。しかし今日では、観光客は経験に対して投資するのであって、単純に価格の問題ということではい。今回の成長は販売量の増加から来るものであり、したがって健全だ。ラグジュアリー市場は長らく販売数を伸ばしてこなかった。販売数の増加は、新規消費者の存在を意味する」とレポートは述べている。
グローバルブルー(Global Blue)によると、2017年1月~9月の9ヵ月間における高級商品の免税売上高は、英国で22%増、スペインで19%増、フランスで8%増、イタリアで%増となった。
「大きな変化は、この成長の8割、つまり2017年に増加した120億ユーロ(約1兆6100億円)分が、ミレニアル世代の消費によるという事実だ。さらにその大半が中国人消費者で、彼らは非常に洗練されており、より良いものを求め、確固とした意見を持っている。そして共有したいとも感じている」とクラウディア・ダルピツィオ。
中国市場自体も再び成長を見せ、高級財の売上高は15%伸びて200億ユーロ(約2兆6800億円)となっている。中産階級が急激に増大したことが背景にあり、情報にも敏感な若い消費者が中心だが、ブランドロゴにこだわっていたのは過去の話で、消費動向を探るのは以前より難しい。中国人の消費は全体の32%を占めており、成長率も一番だ。
地域別には、アジアと欧州が6%ずつ増加しており、日本が4%、米州が2%、中東が1%と拡大した。
ラグジュアリー市場の販売チャネルでは、オンラインが一番大きな伸びを見せ、売上高は24%増の230億ユーロ(約3兆800億円)を記録した。小売は8%増、卸売は3%増となっている。
こうして回復の兆しを示しているラグジュアリー市場は、予想を上回る売上で、翌年も上昇傾向が続くという。アルタガンマのコンセンサスでは、2018年には、アパレルが4%、時計・ジュエリーが5%、雑貨・レザーグッズが7%伸びるだろうと予測されている。
一方のベイン・アンド・カンパニーは、今後3年間、年に4~5%のペースでラグジュアリー市場は成長し、2020年には金額にして2950億~3050億ユーロ(約39兆4700億~40兆8100億円)に達するだろうとしている。
(2017年10月26日現在、1ユーロ=134円で換算)
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