ドイツのファッションデザイナーで科学者のAnke Domaskeが、牛乳を使った全く新しい天然繊維「QMilch」を開発した。牛乳のタンパク質であるカゼインを濃縮して作られたもので、完全に化学薬品を用いずに作られた天然繊維は世界初。牛乳の匂いはなく、シルクのような肌触りで、普通の洋服のように洗濯もできるという。

　牛乳を使った繊維の開発は1930年代から化学薬品が使用して進められてきたが、「QMilch」は初めて化学薬品不使用の天然繊維として登場。牛乳のドライパウダーから抽出したカゼインを他の自然素材と共に加熱し、機械で紡ぐことによって糸状に仕上げる。加熱の行程で分子が結び付きタンパク質を分解しなくなるため、消費期限は気にしなくてよいという。また天然素材で作られているため、エコなだけでなく健康にも良く、タンパク質に含まれるアミノ酸の抗菌性やアンチエイジングの効能から、血流や体温を調節。薬品や化粧品にも応用して使用できる可能性があることから、更なる開発が期待されている。

　Anke Domaskeが展開するファッションレーベル「Mademoiselle Chi Chi」では、開発以降「QMilch」を織り込んだ繊維を使用し服作りをしているが、今後は全て「QMilch」で制作したアイテムをコレクションに加えていく計画だ。ドレス1着を作るのに必要な牛乳の量は、約6リットル。150〜200ユーロの費用が掛かるという。