2020/01/23
パリ クチュール:「ヴァレンティノ」はスリムなシルエットに
2020/01/23
「ヴァレンティノ(Valentino)」が今回のパリ クチュールで見せたのは、いつもよりスリムなシルエットだった。ここ数シーズンは構築的なオーバーサイズのボリュームを追求していたピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)だが、今回はボリュームを削り、よりシンプルなラインで勝負してみせた。
一方で、ホワイトのシャンタンで花びらを象ったデザインや、ヒップからドラマティックに広がるホルターネックのドレスといったエレガントなルックなども素晴らしかった。
テクニックという点ではそうそう並ぶメゾンがいないであろう「ヴァレンティノ」のアトリエだが、今回は創業当時の50年代に焦点を当てた。
色使いも完璧で、インペリアルパープルのパンツに、レッドのボウベルト、フリルが肩から袖にあしらわれたホワイトのブラウスというルックが登場した時には、客席からため息が聞こえたほどだ。
ロマンティックでドラマティックなムードに、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズのバックミュージックもマッチしていた。
いつもの会場に、いつもの豪華なモデルが揃う。ブラックのファイユドレスにオーガンジーのブラウスを纏って登場したステラ・テナント(Stella Tennant)や、細かなスパンコールをぎっしりあしらったクラインブルーのノースリーブドレス姿が美しいマリアカルラ・ボスコーノ(Mariacarla Boscono)といったベテラン勢をはじめ、ピンクのファイユコートを着たカイア・ガーバー(Kaia Gerber)といった若手スターモデルの姿も。
しかし、何と言っても視線をさらったのはラストを飾ったアドゥ・アケチ(Adut Akech)のルックで、ピンクのシルクで仕立てたカラムドレスに同色のマラブーフェザーを扇形にあしらったドレスは記憶に残るものだった。
創業者のヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)もこのコレクションには感動したようで、「君のコレクションの中でも最高の出来だったよ、PP!とても誇らしい気持ちだ!Antoinettaをはじめ、アトリエの仕事は素晴らしい。ディテールまですべてが完璧だった」と自身のインスタグラムに投稿している。
一方で、メゾンのビジネスに関しては色々な噂も聞く。小売店の中ではブランドの売上が伸び悩んでいるとも囁かれており、近い将来に経営陣が入れ替わるとも見られている。
業界の関係者筋はによると、元「グッチ(Gucci)」エグゼクティブヴァイスプレジデントのヤコポ・ヴェントゥリーニ(Jacopo Venturini)が、この春には現「ヴァレンティノ」CEOであるステファノ・サッシ(Stefano Sassi)と交代する見込みだという。ヴェントゥリーニが前の雇用主と交わした非競合協定の終了を待つばかりだという話だ。そういえば、ピッチョーリ自身も少しストレスを受けているような印象だった。
とにかく、今回のショーにも本物のオートクチュールの精神が宿っている。クラフトマンシップはもちろん、会場のムードにいたるまで、美と真のファッションを想像し、育てようとの気概が感じられた。
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