2019/01/16
ピッティ&ミラノ メンズ、トレンドは原点回帰
2019/01/16
フィレンツェの「ピッティ・ウオモ(Pitti Uomo)」に始まりミラノで幕を閉じたイタリアのメンズファッションウィーク。先シーズンのスポーツ・ストリートウェア熱はやや影を潜める形となった。
特に目立った変化としては、トラウザーズがジョギングパンツにとって代わったことだろう。ネクタイを取り入れるブランドもあった。スポーツウェアが姿を消したわけではないが、目に見える形では登場せず、よりクラシックな装いに溶け込んでリラックスしたシルエットを叶えるという役割に落ち着いている。アニマルモチーフやネオンカラーも健在ではあるものの、襟・ラペルなど一部分にアクセントとして用いるやり方が主流に。
今までになく目立ったのはやはりスーツで、グラフィカルプリントやジャージ素材を使ったものなど様々なデザインが登場。Tシャツ、スニーカーとスタイリングしたり、逆にツイードでクラシックに仕上げたり、あるいはグランジ風のオーバーサイズシルエットに昇華したブランドもあった。
バンカーストライプやダブルのブレザーにワイドなタックパンツを合わせた40年代風のレトロなスタイルも人気が高く、グレンチェックも多く見られた。「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)」は「eleganza」をテーマに3ピーススーツやロングコートといったテーラードアイテムを発表し、特に霜降りウールやヘリンボーンの上質な素材を使った見事なアンサンブルが登場すると会場が湧いた。
「これはストリートウェアへの反動だ。エレガントで洗練された男性像を求める動きだが、一方でスタイルは引き続き細分化していて、特に際立ったトレンドは見受けられない」と話すのは、ミラノのラグジュアリーセレクト「Excelsior」のアーティスティックディレクター、Beppe Angiolini氏だ。
クラシックへの回帰はもちろんだが、今シーズンはそこに軽やかさと若々しさが加わった。「プラダ(Prada)」はセーターをジャケットやダウンの上に重ねる着こなしを提案したほか、「マルニ(Marni)」、「ベッドフォード(Bed J. W. Ford)」のようなシャツやジャケットのレイヤード、そして「Beyond Closet」ではシャツをジャケットにオンするスタイルも見られた。
シルエットはややオーバーサイズで、脱構築的な作りの服も目立つ。また、素材の品質を重視する流れも加わり、特にサステナブルな生産であったり、ナチュラル、伝統工芸といった要素がキーワードに。テクノロジーは衣服の機能性だけでなく、環境への負担軽減という方向でも用いられていた。
「ピッティ」では"イグルー"風のインスタレーションが見られ、ミラノでも「Billionaire」がショー会場に雪を降らせたように、極寒を意識したコレクションが登場。パーカやムートンジャケット、マウンテンブーツにレザーグローブなどがキーアイテムに浮上した。"山"をテーマにしたブランドが多く、「ディースクエアード(Dsquared2)」はスキーに、「レゾム(Les Hommes)」はヒマラヤ登山に着想を得ていた。
他にも、チェックのシャツにノルディックセーターといったアイテムのほか、ブークレウール素材やボアのジャケット・コートなども目についた。
「ピッティ・ウオモ」に出展した「Armor-Lux」のエキスポートマネージャーは、「非常に満足のいく結果だ。質の高い展示会で、受注にも繋がった。世界中のバイヤーが訪れたが、特に日本、韓国、中国といったアジア圏が多く、アメリカ、イギリスからの引きもあった」と話す。一方でフランスのハットブランド「Béton Ciré」の担当者によると、「受注は多かったものの、前の数シーズンと比べるとやや減速した印象だ」という。
主催者側が発表した数字では、今シーズンの来場者数は2万4000人と前年同期に比べ4%減少している。
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