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デジタル版ファッションウィーク総評

掲載日
2020/07/20
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 フランスのクチュールからイタリアのスポーティなコレクションまで、13日間のデジタル版ファッションウィークが終了した。すべてオンライン上での開催となった初のシーズンだが、成功した試み、今一つ不発に終わったプログラムなどを検証する。

Jacquemus - Photo: FashionNetwork.com / Godfrey Deeny


 デスクでパソコンに張り付きながら、多くのエディターがリアルなショーを渇望していたことだろう。特に、「ジャクムス(Jacquemus)」がパリ郊外の小麦畑で行ったショー「Field of Dreams」のライブ配信は、ファッションショーの楽しさを皆に思い出させてくれるものとなった。

 しかし、どのブランドにとっても今回は手探りの状態であったことは明白だ。ブランドイメージの構築、広告キャンペーンの前準備、ティーザー、プライベートな顧客への訴求、あるいは単にオンラインでのショールーム開設など、デジタルが持つ可能性も様々だった。
 
 7月5日の「エルメス (Hermès)」メンズウェアコレクションで幕を開け、7月17日の「ミッソーニ(Missoni)」で幕を閉じた今シーズンだが、明日はローマの「ヴァレンティノ(Valentino)」、23日にはレッチェの「ディオール(Dior)」クルーズコレクションと、ランウェイのライブ配信もまだ残っている。誰がデジタルの"勝者"になるかはさておき、成功例と不発だった例、10組を紹介したい。

Gucci Spring/Summer 2021


ストリーミング賞 - 「グッチ(Gucci)」
 アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)は、都市封鎖という状況を逆手にとり、クリエイティブチームをモデルに迎え気の利いたアイディアを見せてくれた。ランウェイを歩き慣れたプロのモデルのようなフォトジェニックな人々ではないかもしれないが、自信のあるアティチュードと自分らしいセンスでコレクションを着こなすにはもってこいだ。メイキングから撮影まで12時間以上がストリーミング配信され、まさにおとぎ話の「エピローグ」に相応しいものに仕上がっていた。

ビデオ賞 - 「ディオール(Dior)」
 マッテオ・ガローネ(Matteo Garrone)監督がローマで撮り下ろしたビデオ「Le Mythe Dior(ディオールの神話)」は、モデルの多様性を欠くといった指摘もSNSで取り沙汰されたが、ミニチュアサイズのオートクチュールコレクションを伝説の生き物や神々に見せて回るといったストーリーで、ファンタージーあふれるシュールレアリスティックな映画に仕上がっていた。

"フィジタル"賞 - 「エルメネジルド ゼニア XXX(Ermenegildo Zegna XXX)」
 「ゼニア」のクチュールコレクションは、イタリアン・アルプスの麓にあるブランド本社を舞台にしたショー形式で披露され、ライブ配信された。アレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartori)手掛ける先端的なテーラリングと高級感のあるステージングがマッチしていた。

 


ボックス賞 - 「JW アンダーソン(JW Anderson)」、「ロエベ (Loewe)」
 インビテーションに凝った唯一のデザイナーがジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)だった。「JW アンダーソン」では、スケッチ、ドライフラワー、スワッチ、切り抜き、レコードまで、様々なインスピレーションをボックスに詰め込んだ。「ロエベ 」でも同様にボックスを使い、クリエイティブなアイディアを見せてコレクションへの興味を高めてくれた。

インディーズブランド・ビデオ賞 - 「Davi Paris」
 「Davi Paris」は、ノルマンディーの崖の下の海岸で戯れる若者たちのひとときを切り取ったビデオクリップを披露。フランスらしいノンシャランスがうまく表現されていた。

クローズ・ディスプレイ賞 - 「Davi Paris」
 最も繊細なやり方で洋服を見せたのは、韓国人デザイナー手掛ける「ジュン・ジー(Juun.J)」だ。ソウルで撮り下ろした白黒ビデオには、ジャンフランコ・フェレ(Gianfranco Ferré)とリック・オウエンス(Rick Owens)の精神が感じられるようだった。アジアのダイナミックなカルチャーから生まれた、ダイナミックなデザイナーだ。

"時代精神"賞 - 「ヴェルサーチェ(Versace)」
 ドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)は、イギリスのラッパー、AJ ・トレイシー(AJ Tracey)をゲストに迎えたパフォーマンスをライブ配信した。「Black Luves Matter」やエンパワーメントなど、"今"の気分を反映したものに仕上がっていた。

 


 
イタリアンクラフトマンシップ賞 - 「サントーニ(Santoni)」、「トッズ(Tod’s)」
 イタリアのファッションに欠かせないのが職人の技だが、実際にエディターやVIPが職人に接する機会は少ない。地元で撮り下ろしたビデオが、メゾンのDNAや職人の技を見事に切り取っていたのが、「サントーニ」と「トッズ」だった。

 「サントーニ」のビデオ「Origini, An Emotional Narration」は、製靴で有名なマルケ州で撮影された。クロコダイルのローファーやレザースニーカーを履いたモデルが、ごつごつした岩の多い浜辺を歩く。不規則な稜線を描く緑の山や谷も、靴のトーンにぴったり合った良い背景となっていた。

 「トッズ」は、70年代のジェットセッタースタイルを取り入れ、「『トッズ』のDNAを自分のものにしようとした」とクリエイティブディレクターのワルター・キャッポーニ(Walter Chiapponi)。デザインスタジオからリサーチチーム、アトリエまで、クリエイティブなプロセスを紹介した。

ファッション・ステートメント賞 - 「プランシー(Plan C)」
 アルプスの麓で撮り下ろした様々な景色をつなぎ合わせたドレスが素晴らしかった「プランシー」。「誰でも風景になるものよ」と語るカロリーナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)は、ストライプやボタンアップのサマードレス、繊細なプリントのファネル・ネックのトレンチなどを披露し、印象に残った。

Maison Margiela's Co-Ed Autumn/Winter 2020 collection - YouTube


 美しいがわかりづらい…… -「メゾン マルジェラ (Maison Margiela)」
 短いビデオを期間中にいくつも公開した「マルジェラ 」。確かに美しく洗練されてはいたが、肝心の服がよく見えず、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)の意図もわかりづらかった。

手抜き?-「ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)」
 ストロボの光るセットでエアドラムを叩く若者を映した「ドリス ヴァン ノッテン」だが、もう少し趣向を凝らすこともできたのではないだろうか。

 

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