2020/01/21
パリ クチュール:「シャネル」、修道院のスピリチュアルなシック
2020/01/21
「シャネル(Chanel)」が披露した今シーズンのオートクチュールコレクションは、ココ・シャネル(Coco Chanel)が幼少期を過ごしたオバジーヌの修道院に焦点を当て、メゾンの原点に立ち戻った。
ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)は、1895年に姉と共にオバジーヌにあるシトー会修道院に送られた。修道院は11世紀に起源を持つ古い施設で、シャネルはここで裁縫を学んだ。黒い修道服は、その後彼女が考案した革命的なアイテム「リトルブラックドレス」の基礎になっている。
修道院は聖母マリア聖心会が貧しい家庭や孤児の少女のために設立した孤児院として機能しており、シャネルは厳しい規律に従う生活を送った。こうした「厳しい規律」というアイディアは、オープニングの精密なカッティングにも表れている。チェックのスーツは膝上丈で仕立て、足元にはホワイトソックスとパテントレザーのシューズをシンプルに開合わせた。また、修道服を連想させる「スカプラリオ」風のカラーが印象的なダークグレーのウールドレスや、ハウンドトゥースチェックのドレスなども目を引く。しかし、何と言っても風に揺れるチェックのトランペットドレスが美しかった。
前回のレディ・トゥ・ウェアのランウェイでは闖入者をキャットウォークからつまみだしヒロインとなったジジ・ハディッド(Gigi Hadid)だが、今回はフロントに腿までスリットの入ったドレスを纏って登場した。
映画『愛と宿命の泉』を思わせるセットは、古いプロヴァンスの泉を再現していて、キャットウォークは修道院の中庭を模した石畳になっている。
しかし、一般的に黒ばかりを纏う修道女たちがインスピレーション源ではありながら、ルックの大半はエクリュやクリーム、ホワイトといった明るい色で仕立てられていた。
また、スーツのプリントには修道院のステンドグラスのデザインを取り入れた。このステンドグラスの色使いは、ココ・シャネルのアクセサリー作りにも影響を与えており、今日では「グーセンス(Goosens)」がメゾンのコスチュームジュエリーを手掛けている。
成功を収めた後に彼女が建てた邸宅「ラ パウザ(La Pausa)」にも、幼少期を過ごしたオバジーヌの修道院の造りが反映されている。
オバジーヌとラ パウザを訪れたクリエイティブディレクターのヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)は、「中庭に人の手が入っていないのが素敵だと思ったわ。日当たりもとても良いの。花の匂いを運ぶ風や、夏を連想させる場所。ハーブ園のような、デリケートな花のエンブロイダリーを入れようと思ったの。オートクチュールの洗練と、質素な場所、そのパラドックスが面白いと感じた」と話す。
もちろん、すべての試みが成功しているわけではなかった。ポケットの位置は逆にシルエットを壊していることもあったが、とにかくクチュリエがリスクを冒す姿を見るのは悪いことではない。ヴィアールの仕事にも徐々に自信が感じられるようになってきた。特に、レースのプリーツドレスやギピュールのカラムドレスは素晴らしい。カイア・ガーバー(Kaia Gerber)は、ホワイトレースのAラインドレスの肩をブラックのヴェールが覆うロマンティックなドレスを纏った。
「寄宿学校というアイディアも好きよ。昔の子供が着ていたような制服がね」とヴィアール。
今回のコレクションは、フリルやジュエリーをできるだけ排除したものに仕上がっている。純粋なクチュールの表現であり、メゾンのDNAへの敬意あふれるオマージュであると言えるだろう。
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