2019/03/04
パリ ファッションウィーク:「イッセイ ミヤケ」、自由な発想のコラージュ
2019/03/04
毎シーズン新素材で驚かせてくれる「イッセイ ミヤケ(Issey Miyake)」。新たな技術を期待されて「プレッシャーを感じることもある」と明かした宮前デザイナーだが、パリ17区の高校の体育館で発表した2019-20年秋冬コレクションは、インスピレーションを自由に連ねたカラフルで軽やかなものに仕上がっていた。
前半に登場したのは、襟がイレギュラーなラインを描くコートやジャケットで、彫刻、それも塑像を思わせる手で捏ねたような印象だ。先シーズン登場した"変形する"素材「Dough Dough」を進化させ、今回は小物だけでなく衣服にも自在に使うことが可能になったという。グレイッシュなトーンも相まって、ウール風の質感の中に羽衣のような軽やかさを添えている。
その後はなじみのあるプリーツ素材やブラックを基調としたルックが続くが、徐々にイエローやブルー、グリーンといった鮮やかなカラーが登場し始める。カラフルなグラフィックプリントの素材には、ブランドのアイコニックなバッグ「Bao Bao」を思わせる細かい三角形のピースが連なって不思議な立体感を作り出していた。今回の新素材「Blink」は、平面的なグラフィック柄に万華鏡のような細かな光のニュアンスを与える。
大きくラウンドして立ち上がった襟や、膝下のレングス、ゆったりしたパンツにオーバーサイズで体を包み込むコートなど、シルエットはいつも通り全体的にリラックスしたもの。有機的にうねる「Dough Dough」やランダムな光の反射を作る「Blink」は、構築的でありながら決して硬質にならない軽やかさと柔らかさを兼ね備えている。
「具体的に決めた目標に着地するのではなく、何か予想外のもの見出したいと思った」と話す宮前義之。秋冬シーズンに向けてカラフルで軽やかなコレクションを打ち出したが、「カシミヤのニットからスプリングコートまで様々な素材を使い、一年を通して着られるようなワードローブを提案したかった」という。
当日のパリは生憎の曇天ながら天井からは自然光が差しこみ、洋服に違った表情を与えていた。現代社会の様々な問題に危機感を募らせるデザイナーも多いなか、思い通りにならない要素を楽しむ「イッセイ ミヤケ」のコレクションは一服の清涼剤になった。
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