2018/10/03
パリ ファッションウィーク:「ルイ・ヴィトン」のプロテクティブで構築的な視点
2018/10/03
「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」の二コラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)は、豊かなイマジネーションを存分に発揮してみせた。
中世とフューチャリズムを融合したコレクションは、近未来の風景を描いたボリュームのあるブルゾンでスタートした。会場のセットも素晴らしいものだ。
今一番旬なステージデザイナー、エス・デブリン(Es Devlin)は、ルーブル美術館の方形中庭に宇宙ステーション風の巨大な回廊を建て、イオ・ミン・ペイによるガラスのピラミッドを囲むように水を張ったプールを設置した。また、キャスティングも今シーズンで一番良かった。フレッシュな顔ぶれが揃い、キャスティングディレクターのアシュリー・ブロコウ(Ashley Brokaw)の手腕に唸らされる。
ベスト、スポーティーなトップス、タンク、ショーツ、カクテルドレスなどには、全てSF的な世界観のプリントが施されていた。全てデザインチームがデジタルで作り上げた風景だという。
しかし、何と言ってもこのコレクションの見どころは、服の構造にある。スパンコールをあしらった袖は大きく膨れ、ショルダーラインは中世の騎士のようなラインを描く。また、アコーディオンスリーブや吟遊詩人風のラッフルシャツも見られた。曲線的なシルエットを、テッキーなイマジネーションで覆われている。ソルトレークシティの湖をドローンで撮影した写真もプリントに取り入れた。
女性の地位に関する議論が活発に交わされる今、二コラ・ジェスキエールが提案するのは、「自分らしく、その瞬間を生きながら、慎重にならざるを得ない状況に直面する」ための服だ。ドラマチックな袖のボリュームに関しては、「鎧ではなく、服の構造が作る保護外殻のようなもの」とジェスキエール。
全員女性ではあるが、ボーイッシュな髪型にマニッシュなルックで登場したモデルも少なくない。LVロゴのトレンチコートやブレザー、コートは、テッキーな分厚いラバー素材でできていて、レザーのような質感にも見えるが、それが力強い構築的なフォルムを実現していた。
「テーマは、曖昧というか、両義的であること。女性が男性のような格好すれば力強くなれると言うけれど、スーツを着ていても脆いことだってある。そういう曖昧に揺れ動くものを表現したかった」とジェスキエールは付け足す。
アクセサリー類もよく出来ていて、バックル付きアンクルブーツや、エキゾチックレザーのUFO型バッグなど、売れそうなアイテムが多く見られた。
バックステージでは、ケイト・ブランシェットにアリシア・ヴィキャンデル、タンディ・ニュートン、ルーク・エヴァンズ、ソフィー・ターナーといったセレブリティが、エディターやインフルエンサーなどに混じって二コラ・ジェスキエールに一言挨拶をしようと殺到していた。
テッキーなイメージのプリントに象徴される通り、いささか"冷たい"コレクションではあるものの、様々なアイディアに溢れた興味深いショーには仕上がっていた。ジェスキエールは「ルイ・ヴィトン」で確かな仕事を成し遂げてはいるものの、やや硬いというか、少し視野が狭いようにも感じられる。モードをけん引していた「バレンシアガ(Balenciaga)」時代とは違い、彼の「ルイ・ヴィトン」は今日のファッションを左右するものではない。
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