2020/02/25
パリFW:「マメ」、薬学部校舎でファッションウィーク開幕 新型肺炎の影で再考する「ものづくり」
2020/02/25
パリ ファッションウィークが、黒河内真衣子手掛ける「マメ(Mame Kurogouchi)」で幕を開けた。最近では「トッズ(Tod’s)」とのコラボレーションでも話題を集めた「マメ」だが、新型コロナウイルスの影響で消費だけでなく、生産や物流といった産業全体のプロセスが見直されるなか、日本のものづくりを詩的かつウェアラブルに昇華しエモーショナルなショーを見せてくれた。
先週のミラノ ファッションウィークは、ウイルスの感染拡大が影を落とす幕引きとなった。まるでそこから逃れるようエディターやバイヤーが移動してきた先のパリだが、まだ特効薬のない病に皆が怯える状況で、最初の会場となったのがパリ大学薬学部というのは皮肉な偶然かもしれない。中庭では、18世紀の薬剤師アントワーヌ=オーギュスタン・パルマンティエ(Antoine-Augustin Parmentier)の像が見守っている。先シーズンから引き続きパリ大学薬学部の旧校舎を舞台に選んだものの、今回は外の回廊ではなく屋内がキャットウォークになった。
先シーズンに引き続いてのテーマ「Embracing(包む)」を深化させ、かご細工を思わせる編み地を取り入れた今回のコレクションは、前回の繭のような軽やかさから一転し、落ち葉や大地といった深く温かみのある色合いが基調になっている。
スリークなキャミソールドレスやエレガントなコートドレスといったオールブラックのルックに、コードを編んだようなエンブロイダリーを施したホワイトのブラウスやドレスが続く。そこに深みのあるブラウンが加わると、洗練されながらもどこかフォークロアなムードが漂った。
ゆったりしたドロップショルダーや流れ落ちるような長い袖はいつもの「マメ」らしいシルエットだが、今シーズンは新しくミニ丈のスカートやドレスが登場。軽やかでボリュームのあるジャカードトップに、足元にはマクラメ調のレースタイツを組み合わせた。シューズとしては、アンクルブーツやレースのスリングバックパンプス、そして「トッズ」とのコラボレーションで制作したサンダルなどを提案している。「トッズ」と協業したサンダルには、イタリアンレザーのクラフトマンシップに青森県・津軽地方の伝統工芸「こぎん刺し」を取り入れた。
しかし何と言ってもショーを盛り上げたのは、フィナーレに登場したリネンのレースを大胆にあしらった一連のコートだろう。コレクションのキーにもなっているこのレースは、関東にある靴ひも製造企業に声を掛け、麻のコードを編み服に縫い付けることで独特の構築的な立体感を実現したものだという。
「洋服を制作している過程で、自分自身が包み込まれているような感覚を覚えた」と黒河内デザイナー。「同じ感覚を、着る人にも感じてもらいたい」と話す通り、内向的でアーティザナルでありながら、現代の女性を意識した堅実なクリエーションに仕上がっていた。
昨年11月には、タロウホリウチ(Taro Horiuchi)と共同でアトリエプロジェクトと題した縫製会社も設立した黒河内真衣子。始まったばかりのプロジェクトだが、「日本の技術やものづくりを継承していければ」と、生産過程に対しても新しいアプローチを試みている。
3月6日には初の直営店を東京にオープンする予定もあり、商業的にも着実な成長を続けているようだ。
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