ラフ・シモンズ（Raf Simons）が、「カルバン・クライン（Calvin Klein）」で初めて手掛けたコレクションが、2月10日に披露された。ニューヨークで最も注目を集めたショーでは、アメリカへのオマージュを捧げた。

　名だたるセレブリティや米ヴォーグ編集長アナ・ウィンター（Anna Wintour）を迎え、ガーメントディストリクトにある「カルバン・クライン」本社を会場にショーが行われた。本社には、ブランドの全アイテムがアーカイブされている。
 
　同時に披露されたメンズとウィメンズのコレクションは、アメリカ人アーティストスターリング・ルビー（Sterling Ruby）からインスパイアされ、アメリカへのオマージュに仕上がっている。

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　ベルギー人で、ルーツを完全にヨーロッパに持つラフ・シモンズだが、現代のアメリカを作り上げる様々な影響や多様性を、外部からの視点で捉えてみせた。ニューヨークを代表する存在であり、数十年前にはアンダーウェアの広告で一世を風靡した「カルバン・クライン」。ブランドを再生し、再考するのが彼の役目でもある。
 
　シャープなスーツ、デニム、バットウィングスタイルのシューズをウィメンズに取り入れ、ビニールコーティングのアウターウェアや、フェザーをあしらったドレス、ウェスタン調のアイテム、ハンドメイドキルティングなども登場。
 
　バックに流したデヴィッド・ボウイの「ディス・イズ・ノット・アメリカ」は、ドナルド・トランプ政権とその移民政策が落とす影を想起させずにはおかない。
 
　今回見せた視点は、現代のアーバンなアメリカを捉えたものであり、トランプを選んだブルーカラーの支配するアメリカではない。
 

過去と未来
 
プログラムのコメントでは、「それぞれが自分のスタイルとドレスコードを持つ、全く違った人々の集まりだ。未来、過去、アールデコ、都市、西部」とラフ・シモンズ。

　　「たった一つの時代、一つの事象、一つのルックがあるわけではない。違う性格、違う人々がすべて一緒になっている。まさにアメリカそのもののように。それこそが、アメリカ独自の美しさと情緒だ」。
 
　ショーの最後に姿を現したラフ・シモンズは、長年の右腕であるピーター・ミュラー（Pieter Mulier）を伴って観衆に手を振った。
 
　天井にぶらさがった布や羊毛は、ルビーのアートワークだという。ドイツ人の母とアメリカ人の父を持つスターリング・ルビーはドイツの米軍基地で生まれ、現在はロサンゼルスを拠点に活動している。
 
　ルビーは、ヒップホップ、街のギャング、グラフィティー、刑務所、グローバリゼーション、暴力、芸術史、消費と浪費などに影響を受けたといい、それが「アメリカの支配と衰退と共にある」と話す。
 
　「カルバン・クライン」に相応しい作品を作りあげる、というのが今回のインスタレーションの目的だ。プログラムでは、ルビーはアメリカを想定したと説明されている。
 
 
世代交代
 
　2016年8月にラフ・シモンズをチーフクリエイティブオフィサーに任命した「カルバン・クライン」は、ブランド全体のクリエーション方針を変革。ウェア、アンダーウェア、ジーンズを一つのヴィジョンの下に統合し、世界の小売売上高100億ドル（約1兆1300億円）を目指す。

 　ラフ就任時には、「カルバン・クライン氏が退いて以来、クリエーションが一人に統括されることはなかったが、今回の決断がブランドを導き、大きな影響をもたらしてくれると信じている」とスティーブ・シフマン（Steve Shiffman）CEOがコメントしている。
 
　ショーの招待状には、トランプ政権下における多様性と寛容を示す白いバンダナが同封されていた。