レモ・ルッフィーニに聞く「モンクレール ジーニアス」とラグジュアリー業界の未来

 2月28日の今日、記録的な2018年度の業績を発表した「モンクレール(Moncler)」。2003年にブランドの過半数株式を買収した筆頭株主レモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)が会長兼CEOを務め、一時は休眠状態だった「モンクレール」を立て直した。

Moncler CEO Remo Ruffini - Photo: Moncler

 2008年に米プライベート・エクイティ・ファンドのカーライル(Carlyle)が48%の株式を取得し、2013年12月にはミラノ証券取引所に上場も果たした。当時25億ユーロ(約3167億2500万円)だった時価総額は、今や80億ユーロ(約1兆100億円)以上だ。
 
 ジャンバティスタ・ヴァリ(Giambattista Valli)とトム・ブラウン(Thom Browne)を起用した高級ライン「ガムルージュ(Gamme Rouge)」と「ガムブルー(Gamme Bleu)」を立ち上げたのもルッフィーニCEOだが、昨年になって大きく方針を転換。毎月新しい商品を投入する「モンクレール ジーニアス(Moncler Genius)」プロジェクトをスタートさせた。先日のミラノ ファッションウィークでは、新シーズンのデザイナーによる新たなコレクションも披露されている。
 
 そんなレモ・ルッフィーニCEOに、「モンクレール ジーニアス」やラグジュアリー業界の先行きについての見解を聞いた。
 

- どうして「モンクレール ジーニアス」を実施しようと考えたんですか?

数年前のことだが、シーズンごとから月ごとのビジネスモデルに移行しようと考えていたんだ。それに、デジタルの発展もあった。皆が毎日オンラインでショッピングを楽しみ、毎日新しい商品を探している。だから、会社にとっても正しい道だと思ったね。毎月、何かしらのプロジェクトがあるということだけど、これはとても「モンクレール」らしいと思う。ブランドのDNAそのものだ。
 

- デザイナーの選択はどうしましたか?

最初8人から始めて、今は10人だね。
基本的に、一年を通してカバーできるようにしようという考えだった。大まかに計算すると毎年8回のデリバリーがあるからね。1月と8月には新規商品は投入しない。戦略としては、スケートボードをしているような若者を、ジャンバティスタ(・ヴァリ)やピエールパオロ(・ピッチョーリ)(Pierpaolo Piccioli)のクチュール的なクリエーションに導こう思ったんだ。
藤原ヒロシは若い子たちに受けが良い。(「パーム・エンジェルス(Palm Angels)」の)フランチェスコ・ラガッツィ(Francesco Ragazzi)は、ストリートやスケートボードカルチャーと繋がりが深くて、リチャード・クイン(Richard Quinn)は若くてスマートだ。シモーネ・ロシャ(Simone Rocha)は洗練されたレディだし、クレイグ(・グリーン)(Craig Green)はとてもコンセプチュアルだし、メンズに強いからね。

 
- 店舗が混乱するおそれは?

あったよ。確かにね。でも、ひと月の間で全商品をデリバリーして売り切るというのがコンセプトなんだ。だから毎月店には違うラインが並ぶ。そこで、少なくとも2、3ヵ月の間は、そのシーズンのブランドが勢ぞろいして店内で見られるようにしようと思った。去年はニューヨーク、東京、パリに「ジーニアス」のポップアップストアも開設したよ。

 
- ジャンバティスタ・ヴァリとトム・ブラウンはどうして退任したんですか?

2人とも自分の会社に本腰を入れたがっていた。トムはプライベート・エクイティ・ファンドにブランドを売却して、今ではゼニア(Zegna)の傘下に入っている。ヴァリはケリング(Kering)がパートナーだね。
 
 
- 2019年度の見通しは?

マクロ経済的には、良い年になるとは言えないだろう。イタリアも厳しいし、フランスはさらに大変だ。アメリカはまあまあ。中国が落ち込むことはないだろうが、それでも成長は減速するだろう。だが、2017年には10億ユーロ(約1266億2500万円)の壁を突破したからね!
 

- フランスのコングロマリットがラグジュアリー業界で勢力を拡大していますが、イタリアではそれに負けてしまうのではという懸念もあるようです。「フェンディ(Fendi)」、「グッチ(Gucci)」、「ロロ・ピアーナ(Loro Piana)」、「ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)」などは、すでに大手フランスグループの傘下にありますね。その点はどう考えますか?

特に心配してはいない。確かに、フランス企業はイタリアのブランドを買収しているね。アルノー氏(ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)=LVMH会長兼CEO)とピノー氏(フランソワ=アンリ・ピノー(François-Henri Pinault)=ケリング会長兼CEO)はすごいグループを築き上げたし、大きな成功を収めた。イタリアでは、我々はもう少し実業家気質なんだ。自分たち自身の会社のことを考えている。ゼニアも大きなグループ企業にはなりたがっていない。プラダ(Prada)は一度試したけれどうまくいかなかった。我々の文化は違う。もっと家族単位なんだ。


- ラグジュアリー業界にとって次のステップは何だと思いますか?

今後10~20年は、トラベルが重要になってくる。仕事よりもずっとね。私が20歳の頃の夢は良い車や良い家を手に入れることだった。でも今の子供たちはそんなもの欲していない。旅をしたいのさ。実際に体験して、外で食事をしたいと思っているはずだ。
 
 
(2019年2月28日現在、1ユーロ=127円で換算)

 
 
 

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