2019/01/04
ロンドン メンズが開幕、ファッションを超えた文化的なイベントに
2019/01/04
ロンドン ファッションウィーク メンズは、時にファッションの表現という枠を超え、文化的な側面を持つ。

英国のEU脱退が3月29日に迫るなか、これがEU時代最後のメンズウェアシーズンとなるが、ロンドンの新年は楽観的なムードで始まっている。ロンドンのサディク・カーン(Sadiq Khan)市長が点灯したロンドンアイには、EU国旗と共に「London is Open(ロンドンは開かれている)」とのメッセージが。市長はその後もツイートで、英国脱退後もロンドンはEU市民を歓迎するとの意向を表明した。
メンズファッションウィーク期間のロンドンには、ヨーロッパだけでなく世界各国から多種多様なデザイナーが集う。今季デビューするのは、イラン系イギリス人デザイナー手がける「パリア ファルザネ(Paria Farzaneh)」や、日本の柳川荒士による「ジョン ローレンス サリバン(John Lawrence Sullivan)」、そしてアラブ首長国連邦出身出身のデザイナーがロンドンを拠点に中東の影響を取り入れた機能的なストリートウェアを展開する「ハリド・アル・カシミ(Khalid Al Qasimi)」といった面々だ。
「ロンドン ファッションウィーク メンズ(以下、LFWM)は、これまでにも『ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)』、『ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)』、『トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)』、『トム・フォード(Tom Ford)』といった有名どころを数多く迎えてきた。しかし、今はむしろ有名・中堅ブランドよりも、国外の若手がロンドンでコレクションを発表したいと集まってきている。ロンドンが世界で最も"クール"な街だからだ」とLFWMのディラン・ジョーンズ(Dylan Jones)会長。

そんな若手の中でも特に注目を浴びているのが「アコールドウォール(A-Cold-Wall)」だ。ロンドン生まれのサミュエル・ロス(Samuel Ross)は、労働者階級の服装とテッキーなスポーツウェアを組み合わせ、コンセプチュアルなディテールと計算されたボリュームで仕上げたコレクションを提案している。ロスはヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)のアシスタントを務めた経験もあり、「LVMHプライズ」のファイナリストにもノミネートされた。
「今シーズンは本当に多様な顔ぶれが揃っていると思う。今はどこの街でもウィメンズ期間に移動する大手ブランドが少なくないが、ロンドンには他に類を見ないほど若手のデザイナーが集っている。『ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)』や『キャサリン・ハムネット(Katharine Hammett)』から、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)』、『JWアンダーソン(JW Anderson)』にいたるまで様々な世代のメンズウェアを見てきたが、今シーズンはあの時代に負けず劣らずの豊作だと感じている」とジョーンズ会長は評する。
ブラジルでは反同性愛を掲げるボルソナロ大統領による極右政権が誕生したばかりだが、ロンドンのメンズファッションは正反対の動きを見せている。特にイーデン・ロウェス(Eden Loweth)とトム・バラット(Tom Barratt)が手がける「アートスクール(Art School)」は、"クィア"で奇抜なファッションを讃えたクリエーションで、ノンバイナリージェンダーを提案する。彼らのショーは初日である1月5日に披露される予定だ。
他にも、KyuYoung ShinとJiSun Parkによる韓国・ソウル発のブランド「Blindness」はジェンダーの垣根を超えたファッションを押し出しているほか、「チャールズ・ジェフリー ラバーボーイ(Charles Jeffrey Loverboy)」も、ドラァグクイーンやディスコ、パフォーマンスアーティストの世界にインスパイアされたウェアが印象的だ。

2013年に始まり、今季で13回目を迎えるロンドン メンズファッションウィーク。参加ブランドの多くがロンドンを拠点としているが、イタリアの「アイスバーグ(Iceberg)」なども参戦している。
さらに、「オリバー・スペンサー(Oliver Spencer)」、「ウェールズ ボナー(Wales Bonner)」、「ステファン・クック(Stefan Cooke)」、「ケント・アンド・カーウェン(Kent & Curwen)」など、モダンなテーラリングとスタイリッシュなカジュアルウェアを得意とするブランドも目立つ。
とにかく、今シーズンのロンドン メンズの目玉は、何と言ってもそのエクスペリメンタルな性質にあると言えるだろう。今日のロンドンは、まさにメンズウェアの実験場だ。
「実験的で現代的、メンズウェアの先端と呼んでも良い」とジョーンズ会長。「ぜひそれを目の当たりにしてほしい。ニューヨークで同じレベルの才能が果たして見られるだろうか?ロンドンには先進的なデザイナーが溢れていて、それが世界中のクリエイティビティに影響を与えている。ミラノには由緒あるメゾンが多いが、我々ほど若手を育ててはいないだろう。相変わらず国際色豊かなパリも、保守的で時にブルジョア的なところがある。ニューヨークと同様、若い才能が不足しているんだ」。
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