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掲載日
2021/12/23
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日本のシルク産業を救え TOKYO BASE元取締役が東南アジアで挑む新事業と再興の道筋

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fashionsnap
掲載日
2021/12/23

 「日本のシルクの産業を守りたい」――その思いからTOKYO BASEの取締役を退任し起業した高嶋耕太郎氏は、2022年からシンガポールに拠点を移し、日本のシルクを使ったブランド「ウィズ オア ウィズアウト(WITH OR WITHOUT)」の拡大に取り組む。アパレルだけではなく、美容や食にも活用できるというシルク産業復興の道筋を聞く。



 高嶋氏はデイトナインターナショナルでバイヤーやMDを経験後、2010年にAmazon Japanに入社し、2014年にメンズアパレル部門の部長に就任。その翌年からは、販売コンサルティング部長を務めた。2016年に同社を退社後、TOKYO BASEに入社。半年後には取締役・事業本部長に着任するなど、順調に昇進していった。
 一方で、近年の気候変動の問題の深刻化や新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、改めて地球環境について見つめ直すようになったという。「幼い頃から社会問題への関心が強かったが、コロナ禍でもうすぐ3歳になる子どもと家にいる時間が増えて、子どもたちの世代が大人になった時、地球はどうなるのかと考えるようになった。このまま将来を考えず自分の生活のためだけに仕事をしていいのだろうか」。
 海外の知人から社会全体でSDGsを推進しているという話を聞いたことも契機となった。「海外は環境を守りながらビジネスに取り組むいう動きが広がっているのに、日本ではその理解がまだ進んでいない。待ったなしの状況で、この瞬間に行動に移さないといけないのではないか」――そういった思いから、環境保全とビジネスの両立を目指し、TOKYO BASEから独立。TOKYO BASEの谷正人CEOも背中を押したという。

 新会社の名はNEXT NEW WORLD。「石油由来のものを少なくし、環境負荷の低いネイチャーマテリアルを広めていく」ことをミッションとする。事業を展開するにあたり着目したのはシルクだ。最初は「一般的に高いモノでも、サプライチェーンを一本化してコストを削減し、値段を引き下げれば売れるのではないか」という考えからシルクに興味を持ち始めた。シルクは高級素材として知られるが、蚕を原料に昆虫食として食べられるほか、優れた美容成分を含むことからコスメにも応用できるなど、用途は多岐にわたる。「今後世界的に人口が増えていく中で必要になるのがタンパク質やアミノ酸。原料から開発して事業を大きくすることができれば、間違いなく需要を掴むことができるはず」。しかし一朝一夕にことが進むことはなかった。シルクについてリサーチを進めていく過程で、高嶋氏は日本のシルク産業の現状を突きつけられたという。
国産シルクは「絶滅寸前」
 世界のシルク市場の実績と予測をレポートにまとめた「Global Silk Market Report, History and Forecast 2016-2027」によると、世界のシルク市場規模は2020年に38億2428万米ドルに到達。生産量は30年で2倍以上に拡大した。しかし農林水産省の調査では、1989年に5万7230戸あった日本の養蚕農家は2020年には228戸に減少し、30年で95%の養蚕農家が消滅したことが明らかになった。高度経済成長で世界一の輸出大国を誇った日本のシルク産業は衰退が進み「絶滅寸前」だという。
 衰退の背景は「価格の高騰」。国産よりも海外産の方がコストがかからないことから国内メーカーの多くは海外からシルクを仕入れている。国内のシルク産業に対しては助成金が交付されているが、高嶋氏によると利益が出にくい旧来のビジネスモデルからアップデートされていない状態が続いているため、市場の縮小が続いているという。「日本のシルク産業を救いたい」。高嶋氏は国産シルクの販路を世界に広げることで産業再興を目指すことを決断した。
 高嶋氏はサプライチェーンの一本化を実現するため、シルクの産地である群馬県桐生市にラボを構え、自ら養蚕業に着手。新会社の社員は今も高嶋氏のみだが、現地でできたネットワークや自治体などからのサポートもあり、量産に向けて順調に進捗しているという。
2時間で100万円を調達したシルク由来の石鹸
 日本のシルクを使ったブランド「ウィズ オア ウィズアウト」では、人体に近いタンパク質だという「加水分解セリシン」を配合した石鹸「Soooo Silk Fluffy Soap」を第1弾商品として開発。ココナッツオイルやパームオイルなど4種類の天然オイルを取り入れ、フラッフィーの泡立ちで使い心地の良さと保湿を実現させた。また、シルクにはUVカットの効果が期待できるという。

 最大の特徴は、98%以上が天然成分で構成されていること。市場に出回っている石鹸やボディソープは石油由来のものが多いが、同ブランドの石鹸では常温で4週間熟成させる「コールドプロセス製法」により天然成分を可能な限り残すことができたという。アルコールや防腐剤(パラベン)も不使用。現在は花の香りを取り入れた「フローラル」や、オリエンタルなハーブが香る「ジャーニー」といった5種類をラインナップしている。パッケージでは著名デザイナーを起用し、セレクトショップにも置かれるようなファッション性のあるデザインを追求。箱や包装紙などの素材には「FSC認証」のものを使用した。
 12月7日からクラウドファンディングサービス「マクアケ(Makuake)」で先行発売をスタート。価格は各色2800円、5個セットと泡立てネットがまとまったスペシャルボックスは1万4000円(いずれも約20%オフ、数量限定価格)と高価格にあたるが、開始2時間で目標金額100万円を達成した。今後もパッケージデザインや香りのバリエーションを拡大する予定。パッケージでは海外のクリエイターとタッグを組み、クリエイティブな側面を持たせていく。
メインターゲットは日本ではなく東南アジアの富裕層
 高嶋氏が見据えるのは国内ではなく、東南アジアだ。「シルクの農家を増やしていくためには、利益を追求していかなければならない。人口が増え、富裕層の増加も見込める東南アジアでの消費を広げていく」。商品開発も日本ではなく東南アジアのマーケットに合わせて進めていくことで、“国産シルクのラグジュアリー化”を目指す。
 今年8月にはシンガポールで事業を展開するために会社を設立。来年から実際に移住し、現地の事業展開に本腰を入れる。将来的にはシンガポール国内でもシルクの生産を始め、川上から川下まで完結する持続可能性のある事業のテストケースにしたい考えだ。
 しかし目的はあくまでも「日本のシルク産業を救うこと」。来年には第2弾商品としてシルク100%の裏毛トップスの受注販売をスタートする予定で、食などの商品の発売も視野に入れる。
 会社としては2年後の黒字化を目標に掲げる。有料会員制のメディア運営などを通じて同社の企業理念に共感する人たちを集めたコミュニティ作りをグローバル規模で進め、独自のサステナビリティコイン(仮想通貨)も打ち出していくという。
■NEXT NEW WORLD:企業サイトクロスボーターECサイト(※12月28日オープン)

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