2017/06/27
ヨーロッパメンズファッションウィーク総集編:ベストコレクション12
2017/06/27
合計17日間にわたるヨーロッパでの一連のメンズファッションウィークが、6月25日にパリで幕を閉じた。ロンドン、フィレンツェ、ミラノ、パリの4都市では、150近いランウェイショーに、さらにその3倍ものプレゼンテーションが行われた。ロンドンの学生によるコレクションに始まり、その後フィレンツェへ、そしてミラノへ北上し、パリの最終ランウェイショーは30年代の高校が会場に。今シーズンの傾向として、ネクタイはほとんど見られず、ボリュームがメインに。高機能スポーツウェアとテーラリングをミックスしたアイテムが目立った。

パリ:「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」
パワーロッカーなテーラリング、破壊的なスタイリング、レーザーレザーカッティングに、ジップをあちこちに配したデザイン(中には、ザ・クラッシュのジョー・ストラマーも顔負けのオールレザールックも)、そして生命の樹のエンブロイダリーを施したコートも登場。21世紀のメンズクチュールの真骨頂と言えるだろう。
ミラノ:「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)」
ドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)とステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)は、トランプをテーマにエネルギーに溢れたコレクションを披露。ミレニアルズ世代のインスタグラムスターをモデルに起用した。体に沿うカッティングのシャイニーなシルクスーツはビターオレンジやプラムで。また、シルクパジャマにトランプのプリントを施したり、クラブのジャックのレインコートなど、"インフルエンサーシック"なウェアが登場した。
ロンドン:「エドワード・クラッチリー(Edward Crutchley)」
ジェンダーミックスな要素も引き続き主要な流れになっているが、特に「エドワード・クラッチリー」はその傾向が強かった。「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」出身のデザイナーは、ジャカードとボールドなカムフラージュ柄のシルクをミックスし、メンズ向けのクリノリンスタイルや、芸者風キモノ、フローラル柄のナイティーを提案。オフィスウェアはただの一つもなかった。ロンドンではベストのショーだった。

ミラノ:「エンポリオ・アルマーニ(Emporio Armani)」
ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)は、日本にインスピレーションを得た。ディテールへのこだわりとクールな美学がアルマーニのクリエーションと完璧にマッチし、キモノ風ジャーキン、トグルボタンの半纏風ジャケット、ゴールデンタキシードに、スカジャンなど、スタイリッシュな「エンポリオ」ショーが完成。

ミラノ:「エルメネジルド・ゼニア(Ermenegildo Zegna)」
「エルメネジルド・ゼニア」の洗練されたノマドスタイルでは、アレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartori)が、波打つような新しいシルエットを作り上げてみせた。パンチングレザーやストライプのシルクを用いた非常に軽いジャーキンは実際浮かぶように揺れていたし、ウォッシュデニムのオーバーコートも目を引いた。若いエグゼクティブ層向けのスーツが主なブランドとしては、画期的なショーになっていた。
ミラノ:「フェンディ(Fendi)」
ヨーロッパのメンズで今シーズン気になったメッセージは、スタイリッシュな実業家やIT企業社長、アートな官僚といった人々が、夏にスーツを着なくなったということだ。その代わりに彼らは、華やかでありながら多機能な、旅行や様々な天候に耐えうる衣服を欲している。「フェンディ」は、軽量で通気性の良いナイロンを使ったマドラスプリントのスーツや、スエードのジャーキン、ブランドのミニレザーパッチがついたアイゼンハワージャケットなどを提案した。
パリ:「ヘッド・メイナー(Hed Mayner)」
イスラエル出身デザイナーがパリを拠点に展開するブランド「ヘッド・メイナー」のコレクションは、野外で長時間待った甲斐のあるものだった。マニッシュなストライプコットンに、ヴィンテージテントからとったキャンバス地、インテリアレザーなどが全て集まって、ウェストコートやジャケットに見事に昇華されていた。新しいスターの到来を告げるようなコレクションだった。
フィレンツェ:「J.W.アンダーソン(J.W. Anderson)」
ハロルド・アクトンが過ごしたヴィッラ・ラ・ピエトラを舞台に、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は、土産ものやブランドロゴといったポップカルチャーをうまく取り入れた。彼自身、ヘルメットをかぶった姿で「Militant Men Wear J.W. Anderson(軍人はJ.W.アンダーソンを着る)」という文句と共にTシャツのモチーフとして登場している。記憶に残るショーであり、裸の神々の像に囲まれ、同性愛者の権利に関する政治的な問いを投げかけるものでもあった。

パリ:「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」
リゾート感あふれる「ルイ・ヴィトン」のショーで、キム・ジョーンズ(Kim Jones)は多くのルールを壊してみせた。スキューバショーツをタウンユースに提案したり、グレーのファインウールのオーバーサイズスーツを山登りのきっと合わせたり、パシフィックブルーのモノグラムロゴサンダルも。ハイテクともモダントラベルをうまく組み合わせたジョーンズは、やはりリーダーの貫禄を見せつけてくれた。

パリ:「トム・ブラウン(Thom Browne)」
ハイヒールのブローグシューズに、グレーのウールシースドレス、あるいはチョークスストライプのコートドレスや、エレガントなカットのプリーツスカートといったアイテムに身を包む男たち。こう聞くと滑稽にも響くかもしれないが、実際そうではなかった。それどころか、服飾史に関するブラウンの深い造詣により、新しいカッティング、ライン、プロポーションをメンズのテーラリングにもたらすコレクションに仕上がっていた。
パリ:「ヴァレンティノ(Valentino)」
新しいムードを最も如実に表していたのは、「ヴァレンティノ」だった。レトロカジュアルなストリートスタイルは80年代の要素を取り入れ、トラックスーツ、パーカ、ライトブルゾンなどを展開。端切れやパッチ、斜めに配置したポケットといったディテールが印象的だ。ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)は、ベルクロのクラスプや、クリスタル、エスニックエンブロイダリーを用いてみせた。センシティブなアスレチックシックと呼べるコレクションだ。
パリ:「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」
「女性がどうやって人を苦しめるか、ということなんです」とバックステージで山本耀司は笑った。しかし、コレクションに登場したイメージは、非常に繊細で儚いものだ。レザージャケットや長いカフタンにも、女性のイメージが描かれている。官能的かつアーティスティックなメンズウェアだった。
不許複製・禁無断転載
© 2023 FashionNetwork.com