2018/10/09
ファッションウィークハイライト:注目のランウェイ12ブランド
2018/10/09
先日終了した4大コレクションの中で、特に注目すべきランウェイ12ブランドをレビューする。多様性やファッションの持つ力にフィーチャーしたブランドが目立った。

「アレキサンダー・マックイーン」
サラ・バートン(Sarah Burton)による「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)は、中世の騎士や修道女を思わせる美しいコレクションを披露した。レザーで仕立てた甲冑風のスーツには、ボールドな赤い花の刺繍が躍る。シルクのタフタで脱構築的なウェディングドレスを作ったり、あるいはシフォンのラッフルドレスにカットワークを施したライダースジャケットを合わせた着こなしも。中世英国風のモードを、ロンドン最高峰のアトリエの素晴らしい技術で叶えてみせた。

「マルニ」
デジタル時代のミロのヴィーナス、といった風情の「マルニ(Marni)」のコレクションでは、古代建築や彫像の写真にエスニックなポルカドットなどを寄せ集めた一癖あるプリントのシルクが印象的だった。フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)は、18世紀風のプリーツ入りフロックドレスには生成りのレザービスチェをプラスしたり、古代ギリシャを思わせるドレスを大胆な角度でカットアウトしてヘムにストーンをあしらったりと、クラシックな要素をモダナイズしてみせた。
会場には、アールデコ、田舎の邸宅、病院、学生寮など、様々な様式のベッドが客席として設置された。「フランケンシュタイン博士がミロのヴィーナスを蘇らせたとしたら。クラシシズムと、現在進行中のメタモルフォーゼがテーマだ」とリッソは語っている。

「プラダ」
過激な保守主義と自由への意思、現代の二律背反をファッションへ昇華させた「プラダ(Prada)」は、単に衣服を超えた明確なメッセージを発信した。クラシックなファッションのコードを、意外性のあるパターンやテキスタイル、プリントを用いて覆す。田舎の父兄や裸の男女のイメージをサイケデリックなプリントに落とし込んだものとタイダイを組み合わせ、クリーンなコートやドレス、テニススカートを仕立てた。
アイコニックなナイロンも、シャーベットカラーやライム、コッパーといった新しい色使いでアップデートされ、そこにサテンのショーツやスポーティなグラディエーターサンダル、コルセットトップやシースルーのニーソックスなどをスタイリングしている。政治的なイデオロギーとして提案されたファッションだった。

「セリーヌ」
大手メディアをはじめ様々な議論を巻き起こしたエディ・スリマン(Hedi Slimane)の「セリーヌ(Celine)」だが、コレクション自体はパワフルなものだった。パリのナイトライフをテーマにしたセクシーなコレクションは、メタリックのカクテルドレスやカウボーイブーツで「セリーヌ」の過去20年を一掃した。ブランドの初のメンズコレクションは、新しいカーヴィーなパンツや丈の長いダブルジャケットが印象的だった。

「パコ・ラバンヌ」
エキゾチックなプリントの70年代ヒッピースタイルが、ハイテクな仕上げで蘇った。「パコ・ラバンヌ(Paco Rabanne)」のジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)は、老舗ブランドでようやく自分自身のスタイルを確立させたようだ。トリミングやパイピングを施した服は、チェーンや紐で繋ぎ合わせている。また、シルクのトップスやサロンはゴールドのコインで飾った。「パコ・ラバンヌ」はアイコニックなメタルのメッシュとチェーンメイルに長い間囚われていたが、このコレクションは新しい地平を切り開いたと言えるだろう。同時に、メタルのメッシュを引き続きふんだんに用いることで、メゾンのDNAに変わらぬ敬意を払っている。

「JWアンダーソン」
「テクスチャーでファッションを称えた」と語ったジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)。「JWアンダーソン(JW Anderson)」の最新コレクションでは、胸の部分に異素材のパネルをあしらったドレスが特に素晴らしく、チョークストライプから軽やかなシフォンまで様々な生地の使い方が目を楽しませた。全てのルックで頭にはレザーのパイレーツキャップを合わせ、衣服を前面に押し出すことに成功している。ロンドンでは最も影響力のあるランウェイだろう。

「ルイ・ヴィトン」
二コラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)の「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」は、中世風のシルエットをSFの世界観に落としこんでみせた。ルーブル美術館の方形中庭に巨大な回廊を設置し、未来的なセットの中でショーを披露した。
ジャンヌダルクもかくやというアーマーのようなシフォンのジャケットの、アメフトを思わせるトップス、タンク、ボリューミーなショーツ、カクテルなど、あらゆるアイテムにロボットや未来都市の風景のデジタル画像がプリントされている。非常に革新的な素材も見られ、フレッシュでラグジュアリー、アイディアに溢れた文句なしのショーに仕上がっていた。

「ヴァレンティノ」
マラケシュのハイソなボヘミアンに、戦前のアメリカにいた素朴なヒッピースタイルをプラスし、洗練されたコレクションを作り上げてみせた「ヴァレンティノ(Valentino)」。ブロケードのフローラルドレスや、ゴシックなペイズリーのガウンドレス、プリーツドレスなどに、ペザントシャツ、バンダナ、ベレー、フェザーといった小物やディテールを合わせ、自由な精神をクラッシーに提案した。

「メゾン マルジェラ」
ジェンダーが益々曖昧に、自由になっていく時代に、一歩先を行くファッションを見せてくれたジョン・ガリアーノ(John Galliano)の「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)は、コレクションを「Mutinity(反抗)」と名付けた。タキシードコートやツイードジャケットは、目がくらむようなビビッドなターコイズのタイトレギンスとカットアウトのカウボーイブーツにスタイリング。フローラルプリントのジャカードで作った巨大なリボンも目を引く。今季の「マルジェラ」のショーは、多様性を大きく肯定する重要なものとなった。

「プロエンザ・スクーラー」
ウォールストリートで行われた「プロエンザ・スクーラー(Proenza Schouler)」のショーは、パリでの3シーズンを経て故郷への凱旋となった。パリで見られた、エンブロイダリーやフェザー、凝った加工に複雑なレザーワークといった装飾は一切排除し、日本製のデニムやコットンギャバジン、ポプリンを用いたロウで力強いコレクションを披露した。生産は全てニューヨークとロサンゼルスで行ったという。アシッドダイのデニムでラッフルを重ねたオーバーサイズのドレスを仕立てたほか、メタリックシルバーのギャバジンシャツにはブラックのサドルスティッチデニムスカートを合わせた。ビッグシルエットのペインターパンツはコットンのストラップを。少しやり過ぎであったかもしれないが、とにかくユニークだ。アメリカのダウンタウンカルチャーを体現した。

「ミュウミュウ」
「ミュウミュウ(Miu Miu)」でのミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)は、クラシックなブルジョアの洗練された趣味を180度転換させ、新鮮でヒップなアティチュードをもたらした。
リトルブラックドレス、タフタのブラウスにクラシックなシースドレスなどは、まるで剪定ばさみで切り刻んだかのような解れがコンテンポラリーな仕上がりだ。ニューヨークでも見られた通り、デニムがハイファッションに返り咲いている今シーズン、パリでのフィナーレを飾った「ミュウミュウ」もデニムのトレンドを肯定した。ファッション界でも指折りの偉大なフェミニストによる、クレバーな提案だった。

「バレンシアガ」
圧倒されるような演出といえば、やはりアーティストのジョン・ラフマン(Jon Rafman)を迎えた「バレンシアガ(Balenciaga)」のランウェイだろう。
ゲストはLEDスクリーンが埋め込まれたチューブの中に入ると、窓にあたる水滴から溶岩、波、火の玉、溶けるセルロイドといった様々なイメージがプロジェクションされた。アーティスティックディレクターのデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)がデザインするコレクションは、メゾンのDNAであるボリュームにフィーチャーしたものだ。ピンストライプ、ベビーブルーのウール、濃いブルーのテッキーなベルベットといった素材で、ウエストがチェスのピースのようにシェイプたコートドレスを見事なカッティングで仕立てた。水平に伸びて直角に曲がるショルダーラインも印象的だ。ヴァザリアの提案するフォルムはセッティングに完璧にマッチし、素晴らしい出来栄えのショーになった。
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