2019/01/27
オートクチュール総括:自然への回帰
2019/01/27
環境問題や昆虫・動物の絶滅など、自然環境に注目が集まるなか、パリのオートクチュールでも「自然」がキーワードになっていた。

今シーズン頭一つ飛び抜けて素晴らしいショーを見せた「ヴァレンティノ(Valentino)」では、一つ一つのルックに花にちなんだ名前を付けるよう、ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)がお針子たちに頼んだという。モデルの半分以上を黒人女性が占め、最後はオーガンジーのドレスを纏ったナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)が登場。パット・マクグラス(Pat McGrath)の手掛けるメイクアップで、モデル達の目の周りには花びらが描かれた。

「シャネル(Chanel)」はイタリア・トスカーナ地方にある豪奢な邸宅のセットを作り、陽光に溢れたステージを見せてくれた。石造りのスイミングポールまで再現されていて、最後のウェディングルックはシルバーのスパンコールをちりばめたスイミングウェアとヴェールというものだった。しかし、メゾン史上初めてカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が欠席し、代わりに彼の右腕のヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)がフィナーレで挨拶に姿を現した。
85歳になるカール・ラガーフェルドは、当日の朝に「疲れを感じて」いたためショーに出席できなかったというのがブランド側の説明だが、様々な憶測も飛び交う。しかしラガーフェルドに近しい人々は、彼の健康状態に深刻な心配はないと主張している。

一方、こちらは83歳のジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)だが、「アルマーニ プリヴェ(Armai Privé)」のショーではいつもより長く会場を歩き回っていた。
自然の他に、アジアからインスピレーションを得る動きもある。アルマーニやジャン=ポール・ゴルチエ(Jean-Paul Gaultier)は、、それぞれシノワズリーな刺繍やハットを取り入れたり、着物を再解釈したルックを披露した。

ロシアの「ウリアナ・セルギエンコ(Ulyana Sergeenko)」のショーで面白かったのは、会場で上映されたビデオだった。エレン・ふぉおとぐらファーのフォン・アンワース(Ellen Von Unwerth)が撮影を手掛け、野生の狼、美しい白馬、トルストイやチェーホフの作品を思わせる村々などがメロドラマティックに表現されている。

星と花をテーマにしたのは、ベルトラン・ギュイヨン(Bertrand Guyon)による新生「スキャパレリ(Schiaparelli)」だ。創業者エルザ・スキャパレリ(Elsa Schiaparelli)は少女台、天文学者だった伯父の影響で宇宙に興味を持っていたが、そこに着想を得たコレクションだった。タイトルは「Florea Ursae Majoris(星の花々が見る夢)」。しかし、その結果はというと、アイディアがごちゃごちゃと散らかったような印象を受けた。バルーンスリーブのミニドレスや、ターコイズのマフをあしらった星座プリントのコート。紫のフェザーでできた球状のドレスは誰かが袖をつけ忘れたかのようだ。さらに、足元にウエスタンブーツを合わせたのもよくわからない。

また、クチュールはファッションの巨大な実験場でもある。"科学者"として知られるロナルド・ファン・デル・ケンプ(Ronald van der Kemp)は、コレクションを全てアップサイクリングで制作した。魔法のような美しさというよりは、興味深い革新性が押し出された服ではあったが、皮肉の効いたマダム風ガウンや素晴らしいカッティングのミッドナイトブルーのパンツスーツなどは、どちらも素晴らしかった。
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