2018/08/28
エルメネジルド・ゼニアが「トム・ブラウン」の株式85%を取得
2018/08/28
エルメネジルド・ゼニア(Ermenegildo Zegna)が、「トム・ブラウン(Thom Browne)」の株式85%を取得することで合意した。現在ブランドの株式は創業者トム・ブラウンと主要株主である米投資ファンドのサンドブリッジ社(Sandbridge Capital)が保有している。取引額は5億ドル(約560億円)相当。

合意によると、ゼニア社の他はトム・ブラウンだけが株主として残留することになる。また、ブラウンは今後もチーフクリエイティブオフィサーを続ける予定で、CEOのロドリゴ・バザン(Rodrigo Bazan)も続投する。
「ゼニアとの新たな提携を誇らしく思う。高い品質とクラフトマンシップに重きを置く彼らの価値観は、私が自分のコレクションで実践してきたアプローチに合致するものだ。デザインに対するコンセプチュアルなアプローチと、デザイン性に基づいた本物のラグジュアリーを生み出したいという長期的な視点は、我々が強く共有しているもので、ゼニアと共に歩む『トム・ブラウン』の強みにもなるだろう」とトム・ブラウン本人はコメントしている。
また、ゼニアグループのジルド・ゼニア(Gildo Zegna)CEOも、「ラグジュアリーメンズウェアをけん引する存在として、グループ外部での発展の機会も視野に入れてきた。そして資本提携を考えた時、『トム・ブラウン』は理想的なパートナーだと常から思い描いていた」と話す。
「確固とした基盤を持ち、ウィメンズビジネスにも強く、ミレニアル世代への訴求力もある。長期的な価値をを築いていけるだろう」とも付け足した。
エルメネジルド・ゼニアにとって、若い世代と強い繋がりを持つブランドを取得することは悲願でもあった。2012年には、「ヴァレンティノ(Valentino)」をめぐって入札し、カタール王室に敗れている。11億ユーロ(約1400億円)で傘下に収めた「アニオナ(Agnona)」もトレンドなブランドと言うには位置付けが違い、今回「トム・ブラウン」にはブランドの年間売上高の3倍の額を提示することとなった。市場関係者によれば、「トム・ブラウン」の年間売上高は2016年に1億ドル(約110億円)を突破し、翌年には25%ほど増収があったという。
トム・ブラウンは2001年に自身のブランドを立ち上げ、2006年と2013年の二度にわたってアメリカファッションデザイナー協議会(CFDA)のメンズ・デザイナー・オブ・ザ・イヤーに選出されている。最初はニューヨークのミートパッキングディストリクトにある小さなアトリエでスーツを生産していたが、今やアメリカでも有数の影響力を誇るファッションブランドへと成長を遂げた。
ロドリゴ・バザンCEOのもとで販売網を拡大し、現在では世界各国に約30店舗ほどを展開。また、デジタル面ではファーフェッチ(Farfetch)とも提携している。
メンズが3分の2、ウィメンズが3分の1という内訳ではあるが、ウィメンズに関してはシーズンベースで30%と大きな伸びを見せている。
サンドブリッジ社のケン・サスロー(Ken Suslow)マネージングパートナーは、「ゼニアは『トム・ブラウン』ブランドにとって理想的な提携先だ。そう考えたので、我々は他社の買収提案に取り合わなかった。ジルドとトムと私は、非公式な交渉で合意に至った」と説明した。
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