イギリスのEU離脱、ファッション業界に及ぼす影響は

  一年前、イギリスのEU離脱、いわゆる"ブレグジット"が決定すると、同国のファッションデザイナーのおよそ9割は驚きと抗議を示した。
 
 2016年の2月23日、「バーバリー(Burberry)」は英タイムズ紙に手紙を投稿し、残留を指示する立場を表明した。また、6月23日に行われた国民投票の一週間前には、ヴィヴィアン・ウェストウッド(Vivienne Westwood)がメッセージ Tシャツを着用してEU継続に投票するよう呼びかけている。ブレグジット反対の公開状には282名のクリエイティブ関係者が署名したが、その中にも彼女は名を連ねた。ロンドンコレクション・メンズ期間中には、ドイツ人写真家のヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)が撮影した新EU派のポスターが英国ファッション協議会(BFC)の受付エリアの壁を飾ったこともある。

Gareth Pugh - Fall-Winter2015 - Womenswear - London - © PixelFormula

 ファッション業界では、教育の面でも輸出の面でも影響が出ると見る向きもある。イギリスには世界有数のファッションスクール、セントラルセントマーチンズが存在し、ヨーロッパのメゾンに優れた人材を供給してきた。ブレグジットに伴う移民規制の強化に関しては、メイ首相は学生を数から除外するとしているが、既にイギリスに居住しているEU圏内出身外国人の身分には不安が残る。
 
 さらに、イギリスのブランドの衣服やアクセサリーのほとんどが、大陸側のヨーロッパで生産されたものだ。
 
 「国民投票の結果には、皆と同じく驚いたよ。私はEUを支持する。大陸の側に店舗もショールームも多数持っているし、1976年からパリのファッションウィークでコレクションを発表しているしね。生地もイタリアや他のヨーロッパ諸国で買い付ける」とポール・スミス(Paul Smith)。
 
 今後は、EUに加盟している27ヵ国に対する出荷が、輸出扱いになることも問題だ。更にファッションメディアにも影響はある。パリでのフォトシューティングに使う衣服をロンドンから送る場合も、ブレグジット後は単なる小包では済まず、より多くの費用と時間が掛かることになる。
 
 また、パリでショーを披露している「ヴィヴィアン・ウェストウッド(Vivienne Westwood)」、「ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)」、「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」、「ポール・スミス(Paul Smith)」はもちろん、英国ファッション協議会もパリのマレ地区で毎シーズン「ロンドン・ショールーム(London Show Rooms)」を主催しており、こうした大陸とのやり取りも複雑になることは必至だ。
 
 「テンパリーロンドン(Temperley London)」を手掛けるアリス・テンパリー(Alice Temperley)も、ファッションウィーク中にはパリのショールームでコレクションを披露している。「ヨーロッパは重要。『テンパリーロンドン』はヨーロッパで販売しているし、縫製工場もヨーロッパ、そして多くの従業員やパートナーはヨーロッパから来ているわ」と話した。
 
 ブレグジット後にポンドは下落し、英国ブランドの生産コストが増加することになった。一方、イギリス国内での外国人による消費は伸びている。
 
 「バーバリー」のように、為替変動の恩恵に預かった大手ブランドもある。「ブレグジットは我々の望んだ結果ではなかったが、確かにポンド安が観光客の増加につながり、決算の換算でも有利に働いたということは事実だ」とバーバリーのアンドリュー・ロバーツ(Andrew Roberts)コーポレートリレーションヴァイスプレジデント。

Instagram: Vivienne Westwood

 BFCのキャロライン・ラッシュ(Caroline Rush)CEOはこう語る。「EU離脱に関しては、未解決の問題が多く残っている。メイ首相がリスボン条約50条発動に署名したとしても、それを即座に解決することはできない。英国のファッション業界は、運動期間中に声高にEU離脱反対を訴えてきたが、決断は既になされてしまった。今は、我々の業界の要望があらゆる局面でくみ取られることを確認する必要がある」。
 
  昨年6月、BFCは500人のデザイナーに対してブレグジットに関する意識調査を行った。ッ結果、離脱に投票すると答えたのはわずか4.3%であったという。投票後にもBFCは政府と協議を重ね、9月のロンドン ファッションウィークのキャッチコピーとして” London is Open for Business(ロンドンはビジネスに開かれている)"というフレーズを考案した。また、首相官邸ではファッションにおける「受容と教育」を祝福レセプションも開催されているが、パーティーの雰囲気は"祝福"とは程遠いものだった。
 

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