2017/12/11
ブルーノ・パブロフスキーに聞く「シャネル」の実店舗主義
2017/12/11
ラグジュアリーブランドが一様にデジタル化を目指す中、「シャネル(Chanel)」のブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)ファッションプレジデントは、実店舗展開とライブイベントの拡大を来年の計画の要として掲げている。

「2018年は旗艦店オープンの年になる。新規開店と改装開店とを合わせても、うち6店が非常にインパクトのあるものになるだろう」とパブロフスキー氏は話す。
ニューヨークの57丁目やロンドンのブロンプトンクロスの新店舗から、ソウルの新旗艦店はもちろん、コペンハーゲン、アブダビなど新規市場への初出店も果たす「シャネル」。現在、190店舗もの路面店を展開している。また、12月1日には、日本で初めての路面店としてオープンした「シャネル 銀座並木」が3年の改装期間を経て開店した。ピーター・マリノ(Peter Marino)が手掛けた内装は、マットなブラックとホワイトのパネルでできていて、ココ・シャネル(Coco Chanel)のカラーコードを踏襲している。
「世界にある店舗はすべてピーターが手掛けた。全てピーターのもので、今までになくピーターだよ」と同氏は笑った。来年の開店で一番注目されているのは、年半ばにオープン予定のパリ店だ。メゾンの本社があるカンボン通りと、サントノレ通りの交わる角に位置するという。
12月6日には、ドイツ・ハンブルクでカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)手掛けるメティエダールコレクションのショーが披露された。会場となった同地で、「素晴らしい挑戦だ。会場も良いし、港も素晴らしい。カールにも、デザインスタジオにもインスピレーションを与えてくれるね」とも語ってくれたパブロフスキー氏。
カールの生まれ故郷ということもあり、これが最後のショーになるのではないか、という噂もインターネット上では囁かれていたが、それを一笑に付す。
「へえ!カールの故郷に来たから、そういう噂がね。でもこれだけは言える。昨晩もカールと話したけれど、もう来年12月のショー会場を議論していたんだよ!」。

先月は、パリで5月に発表されたクルーズコレクションを披露しに、中国の成都まで赴いたという。
「今回のショーでは、微信や微博といった現地SNSで6億9800万ヒットを記録したんだ。こういうインパクトを与えることで、手の届く夢を提供できる。ブランドに触れ、ブランドがどういうものなのかを理解する機会になるんだ。でも、それは実際の顧客とは一切関係がない。5億人が我々の店を訪れて買い物をしたなんてしないからね。心配は要らない!」。
パブロフスキー氏は、大衆に提供する夢と、販売する商品の希少性のバランスがラグジュアリーの要と考える。必然的に、「シャネル」のCEは化粧品とアイウェアに限られることになる。
「『シャネル』はワンクリックで買うブランドではない。5000ドルのジャケットや1万ドルのドレスを購入すると思えば、ワンクリックで済むはずがないんだ。どこでもクリックできるよ」。
中国では、中国国際貿易センターにも出店予定だ。同国における事業は、2015年にパブロフスキー氏が導入した各国間の価格差是正により大幅に伸びているという。ヴェルテメール(Wertheimer)兄弟が所有する「シャネル」は決算を公開してはいないが、2016年の売上高は57億ドル(約6462億5900万円)に上ると見られている。
「中国の店舗でも、繰り返し足を運ぶ中国人顧客が増えている。『シャネル』を買うのに、パリやニューヨーク、ロンドンまでわざわざ旅をする必要がなくなったんだ。これは非常に重要なことだよ」と強調する同氏。確かに、「シャネル」の売上のうち中国人顧客による消費が占める割合は10%と、他の競合ブランドと比較するとやや低くなっており、まだまだ開拓の余地がある。可能性の一つが、インフルエンサーだ。
「中国のインフルエンサーの面白いところは、ブランドの捉え方だ。2000万人、2500万人という数のフォロワーを抱える人もいる。そして彼らは、フォロワーの求めているのが、彼らの物の見方そのものだと知っている。我々はこういう側面を薄めたりしたくない。彼らはキーオピニオンリーダーであって、キーオフィスレディーになってはいけなんだよ!あるインフルエンサーは私にこう言った。『フォロワーは私たちの物の見方を知りたがっている。でも、ブランドのような仕事はできない。だから気をつけて。ブランドは全部をごちゃまぜにしてはいけないの』。良いメッセージだったよ。インフルエンサーに、ただブランドが素晴らしいと言わせるために金銭を支払ってはいけない。とにかく、インフルエンサーとの間に契約は必要ないんだ」。
(2017年12月11日現在、1米ドル=113円で換算)
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