2020/07/13
パリ メンズ:「ディオール」の"ブラック・ディアスポラ"
2020/07/13
「ディオール(Dior)」がデジタル版パリ メンズファッションウィークで発表した2021年春夏メンズコレクション「Portrait of an Artist(あるアーティストの肖像)」は、ガーナ出身のアーティスト、アモアコ・ボアフォ(Amoako Boafo)にフィーチャーしたものだった。
公開されたビデオはアフリカの海岸の風景から始まり、ボアフォのスタジオへと向かう。ボアフォは独学で画家になり、特に「ブラック・ディアスポラ(Black Diaspora)」シリーズで知られる。
ポートレートのモデルは友人であったり家族であったり、近しい人々を描いていると話すボアフォ。動画の中では、それぞれが自身の肖像画の前で「ディオール」の服を纏っている。
ボアフォは「ファッションは好きだよ。作品にもインスピレーションを与えてくれる。自分のスタイルとセンスを持つ人々に目をつけるんだ」と語った。

「ブラック・ディアスポラ」シリーズは、自身のルーツとアイデンティティを祝福した作品群だ。ゴム手袋を着けて指で直接描くのがボアフォのスタイルで、モデルは鮮やかなイエローやターコイズの背景をバックにポーズをとる。
「僕のフィンガーペインティングのテクニックが、どのように服に落とし込まれるのか。ファッションブランドとコラボレーションしてみて、それが興味深いと思った」と話すボアフォは、「ディオール」メンズクリエイティブディレクターのキム・ジョーンズ(Kim Jones)とマイアミのルベル美術館で出会った。「ディオール」が前回クルーズコレクションを発表した場所だ。
キム・ジョーンズがガーナを訪問した際、ボアフォの作品「グリーンベレー」の色使いに惹かれ、その質感や色を今回のコレクションに取り入れたという。
「本当に彼の作品が大好きなんだ。僕自身アフリカで育ったから、アフリカのアーティストと仕事をしたいと長年思っていた。アフリカの芸術は僕にとって重要なものなんだ」とキム・ジョーンズ。

元はランウェイショーでの発表が予定されていたが、今シーズンはコロナ禍を受けて違った形でのアプローチとなった。ジョーンズによると、今回のコレクションは、ボアフォの生き方や作品を凝縮すると同時に、「とても『ディオール』らしいものを作った」のだという。「僕の敬愛するアーティストの肖像だ」とロンドンのサウンドスタジオで語った。
カラフルでノーブルなアティテュードのスタイリングは、キム・ジョーンズが「ディオール」に持ち込んだスポーツウェアのテイストを強調している。もちろん、常に進化したテーラードも取り入れており、ホワイトのピンストライプジャケットは袖がラペルに繋がるデザインが目を引く。また、タフタのサファリジャケットは、徐々にボリュームのあるパーカに。ボアフォの作品にあったのと同じパウダーブルーは、フロントパッチポケット付きのショーツに使われていた。Yoonによるジュエリーも今季は特に冴えている。
ビデオクリップは2章仕立てで、前半はクリス・カニンガムが、後半はジャッキー・ニッカーソンが手がけた。全員アフリカ系のモデルを採用していたが、ボアフォによる横顔のポートレートをあしらった巨大なロールネックセーターを纏ったルックが印象的だった。
ノーブルで洗練されたコレクションは、堂々としていながら細やかに仕上がっている。時代に合った、手応えのあるものだった。
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