2019/06/23
パリ メンズ:「ルイ・ヴィトン」の"グリーン"なランウェイ
2019/06/23
ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)による3シーズン目となる「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」のランウェイは、より密度の高い、クレバーで実験的なものとなったが、同時にどこか哀愁も感じさせる。ショーはシテ島のドフィーヌ広場で静かに行われた。

モデルの多くはフレッシュな顔ぶれで、花が生えた新モデルのバッグを手にキャットウォークを歩いた。特に目についたのは、ブライトグリーンのダミエで仕立てたトライアングルのボストンバッグだ。スタンディングスペースの招待客はもちろん、入り口から雪崩れこまんばかりの勢いでセキュリティに止められている人々も、すべてヴァージル・アブローのファンだ。アブローは今日のファッション業界でも一二を争うスターと言えるだろう。
ゆったりしたパンツとオーバーサイズのジャケットというセットアップはライラックやローズといったプロヴァンス風のトーンを、プリーツウールのトレンチにはラベンダーを用いた。ワイドショルダーのダブルジャケットは石畳と同じ色だ。中には、生花やテキスタイルで仕立てた花を纏うモデルも。小物としては、ロープをあしらったファーマー風のストローハットで仕上げたルックが目立った。牧歌的ながら洗練されたムードが漂う。

先シーズンのメンズウェアでは、他デザイナーのアイディアを引用しているとSNSで口々に批判を浴びたヴァージル・アブロー。今回も、最後の数ルックは洋服の上に様々なオブジェを貼り付ける手法で知られる「クレイグ・グリーン(Craing Green)」を思い起こさせるものでもあった。「ダイエットプラダ(Diet Prada)」が爪を研ぐ音が聞こえてくるようだ。
その点はいささか残念だったものの、コレクションには素晴らしいピースも多くあった。ブルーの花をあしらったレインブーツや、新鮮なデザインのコンバットブーツ、フォルムで遊んだロゴトートなどは面白い。しかし、前日見せたアブロー自身のブランド「オフ-ホワイト(Off-White)」のレベルには今一歩至らないところが惜しい。

他ブランドとの類似性という点も、「ルイ・ヴィトン」のように唯一無二のラグジュアリーなクラフトマンシップを売りにしているメゾンにとっては、あまり好ましくない要素だろう。
ちなみに、ショー会場はパリの司法機関が集まる「パレ・ド・ジュスティス」にほど近い場所にある。90年代前半に遡ると、ピエール・ベルジェ(Pierre Bergé)がラルフ・ローレン(Ralph Lauren)を相手にイブニングドレスの権利を侵害したとして訴訟を起こしたのもシテ島の裁判所だった。
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