2019/09/27
パリFW:ヴァージル不在の「オフ-ホワイト」
2019/09/27
ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)による「オフ-ホワイト(Off-White)」最新コレクションは、フランス最大の近現代美術館ポンピドゥ・センターで発表された。しかし、アブロー本人の姿はどこにもない。

医者の助言に従いパリ ファッションウィークへの参加を取りやめたと発表したヴァージル・アブローは、「オフ-ホワイト」の他にも「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」メンズのデザイナーとしても忙しい。
ちなみに、ブランドを展開するイタリアのニューガーズグループ(New Guards Group)は、先日ファーフェッチ(Farfetch)に6億7500万ドルで買収されたばかりだ。ファーフェッチ株はその後40%下落している。
体調不良をパリ不在の理由に挙げたアブろーだが、ミラノのとある情報筋の話によると、彼にはまた別の頭痛の種があるという。ニューガーズグループは「オフ-ホワイト」ブランドに関して25年のライセンスを所有しており、ファーフェッチとの契約にはこれも含まれている。しかし、「オフ-ホワイト」のブランドの名前そのものはどこにも見当たらないというのだ。つまり、アブローはこの取引の恩恵を受けられていないということになる。
ヴァージル・アブローのドレーピングやカッティングといった能力については言葉を濁す業界人も多い。だが、一般消費者受けするイメージという点では、現在のところ並ぶものはいない勢いであることも事実だ。

例えば、現代女性のワードローブから遠ざかったアイテムであるボールガウン。アブローは背中を大胆に開いてパラシュートナイロンをあしらいフロアにはためかせた。こうしたドレスも彼の手に掛かればクールなカテゴリとして蘇る。
フランス発祥の学問に記号学というのがあるが、ヴァージル・アブローのクリエーションはまさに表徴の宝庫だ。目を引くスクリプトやコンセプトを考案する能力には目を見張るものがある。
海藻のようなフェイクファーのストラップやレザーのカットアウトを施したウェッジ、トライアングルのイアリングに、穴の開いた新しいバッグ。さらに彩度ポケット付きのホルスターベルトも目を引いた。それをジジ(Gigi)&ベラ・ハディッド(Bella Hadid)姉妹のようなスターモデルが纏う。すべてがトレンドアイテムとなることだろう。

しかし、中でも一番出来が良かったのは、ややシアーなホワイトのタンクトップだった。サイドにカットアウトを施し、ネックラインには「OFF」の文字が。シンプルなアイディアが完璧にはまっている。
これもシンプルなコットンドレスは、テッキーなアビエーターグラスとスタイリング。フードつきのレインギアに、くるぶしで結ぶ形のヒップにホールのあるレザーパンツなど、どれも魅力的なアイテムだ。その多くにロゴとテキストがあしらわれている。
二コラ、ジュリアン、ナターシャと、よりスキルのあるパリのデザイナーは多いが、ヴァージル・アブローはそれに一矢報いたと言っても良い。やや"古い"形のデザイナーと比べ、アブローのショーと服、そしてアティチュードは今やそのずっと上を行っている。
ショー前のアナウンスでは、ダンサーのアルヴィン・エイリーと「Avatars of human creativity(人間の創造性の化身)」への言及もあった。アブローを言い表すのにも悪くない言葉である。しかし、このショー一番の疑問はやはり「ヴァージルはどこ?」の一言に尽きる。
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