2020/02/27
パリFW:「アンリアレイジ」、積み木遊びで作る"縫わない"ハイブリッドファッション
2020/02/27
森永邦彦の「アンリアレイジ(Anrealage)」は、ここ数シーズンのテーマである「ディテール」を独立させ、それぞれを積み木感覚で組み立てる「ブロック」を作り出した。

キャットウォークの後ろには積み木の城が設置されいた。客席に置かれたプログラムも、各パーツの名称と組み合わせが描かれ、まるでレゴブロックの設計図か家具の組立説明書といった具合だ。
まずはベーシックなトレンチを粗い3Dポリゴンで再現したようなルックがオープニングを飾った。それぞれ、上身頃、下身頃、肩、袖、カフとディテールごとに継ぎ目があり、キューブ状のそれが組み合わさって一つの服を構成している。そこからは、ブレザー、MA-1とやはりアイテムとしてはベーシックなアウターが2型続く。
しかしその次に登場したのは、トレンチの上身頃とカフに、ブレザーの袖とブレザーの下身頃をドッキングしたアイテムだ。その後も同じように、トレンチ、ブレザー、MA-1のパーツをミックスしたルックが。
アウターだけでなく、ドレスやパンツ、ニットまですべて同じシステムで仕立てられており、パターンの妙や素材使いで楽しむのとは違う新たなハイブリッドスタイルを提案している。面白いのは、同じ部位同士を交換するだけでなく、別の部分に取り付けることも可能だという自由度の高さだろう。それぞれのパーツは縫い合わされておらず、ブラインドホックで繋がっているため、着用者がその場で自分だけのアイテムを構築できる。
森永のコンセプトは徹底しており、アーガイル、千鳥格子や小紋柄といったパターンやシューズのヒールまで、すべてこの「積み木」の概念で作り上げた。

洋服の根幹を成す「縫う」という行為を揺るがす試みは、特に「ユイマナカザト(Yuima Nakazato)」がオートクチュールの世界で行っている。「クチュール」という言葉はフランス語で「裁縫・縫製」を意味するが、「縫う」のではなく「組み立てる」という感覚はファッションデザインや消費のあり方にも変化をもたらすかもしれない。
ショーピースではあるものの、販売にあたっては基本的にひとまとまりのアイテムとして売り出すほか、パーツごとに購入も可能になるという。独特のボリューム感とシルエットも面白いが、実験的なコンセプト故に全体的としてやや硬い印象も受けた。ブランドのクリエイティビティや着用者との関係が今後このコンセプトとどう結びついて発展していくのか、興味深いコレクションに仕上がっている。
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