2020/02/28
パリFW:「ロエベ」のセラミックなシック
2020/02/28
今シーズンのパリで一番フレッシュな感性を見せたのは、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)手掛ける「ロエベ(Loewe)」だろう。新鮮かつノーブルなコレクションを披露した。

パリ風のシックとルネサンス期スペインの芸術要素を巧みに組み合わせてきたアンダーソンだが、今回はそこにもう一つ「セラミック(陶器)」を取り入れた。2018年のロエベ財団クラフトプライズで特別賞を受賞した日本の陶芸家、桑田卓郎の作品だ。
胸部やウエスト部分にパネルとしてあしらうことで、独特のフォルムのドレスが出来上がる。バッグにには大ぶりのブレスレットがアクセサリーのようにぶら提げられた。
ブロケードやシルクのジャカードは武骨なウールと好対照をなし、アンダーソンはそれを見事なファッションの表現へと昇華させていた。面白い事に、目を引くシルエットはどれも、スペインのベラスケスというより、ファン・エイクやフェルメールといったフランドルの画家を連想させる。かっちりとした上身頃に続き腰の下から広がっていくドレスや、見事なカットのグレーのコートにはフロントロウのバイヤーも夢中になっていた。また、ブラックのサージで仕立てたスーツも素晴らしく、足元には「L」のロゴをあしらったパンプスを合わせている。
しかし、中でも特に目立っていたのは、シルクジャカードのドレスだろう。頭にはフェザーの巨大なヘッドアクセサリーをスタイリングしていた。

自身のレーベル「JW アンダーソン(JW Anderson)」も先日ロンドンでショーを披露したばかりだが、2つのメゾンを掛け持ちするとデザインが似通ってしまうことも珍しくない。巨大なラペルのAラインコートなどにはその片鱗も見られたものの、しかしジョナサン・アンダーソンはそうした類似を極力回避している。特に、ビジネスの核ともなるアクセサリーに関しては、上手くブランドの違いを演出してみせた。
今シーズンのヨーロッパでは、ベテランモデルの起用が流行りのようだが、アンバー・バレッタ(Amber Valletta)、ドウツェン・クロース(Doutzen Kroes)、カーリー・クロス(Karlie Kloss)、キャロリン・マーフィー(Carolyn Murphy)といった大御所は、今回キャットウォークを歩くのではなくフロントロウに腰を下ろしていた。ちなみに、その向かいには、アナ・ウィンター(Anna Wintour)と共に、ブランドの親会社LVMHファッショングループ(LVMH Fashion Group)のトップ、シドニー・トレダノ(Sidney Toledano)の姿もある。
ショー会場を後にした観客は皆、トレダノCEO以上に満足そうな笑顔を浮かべていたはずだ。
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