AFP
2016/02/17
“すぐ手に入る”コレクション 変容するファッションの現場
AFP
2016/02/17
ショーの直後に購入できるアイテムを提案するブランドが増えている。今シーズンのニューヨーク ファッションウィークで顕著に見られたこの動きは、主にSNSの普及に後押しされたものだ。
今季のNYファッションウィークは、ランウェイショー150年来の歴史を塗り替えるものになったと言っても過言ではないだろう。
従来、“プレタポルテ”、つまり既製服は、コレクションの発表から店頭での販売開始まで、半年待つ必要がある。しかし、ここに来て、そのシステムを見直す必要が出てきている。
マルチメディアやSNSの発達により、今までは業界関係者やエディター、セレブリティといった一部の人々にしか共有されていなかった情報が、一般に広く知れ渡るようになった。
こうして一般消費者にも最新コレクションを目にすることが可能になり、そうすると当然、目にしたアイテムを今すぐ手に入れたいという欲求が生まれる。
「若い世代は待ってくれない。見たアイテムをその日や、最低でもその翌日には着たいと考える」とAFPに語ったのは、トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)だ。
「消費者が8ヵ月前に見たものを覚えているかというと、難しいところ。待っている間にも、様々な画像やイメージを目にするのだから」とNPDのアナリスト、マーシャル・コーヘン(Marshal Cohen)は指摘する。
先日13日にショーを披露した「レベッカ・ミンコフ(Rebecca Minkoff)」は、「#SEEBUYWEAR(見て、買って、着て)」と題したコレクションを発表し、ランウェイに並んだアイテムの7割が、ショー直後に手に入るシステムを早くも導入した。
「ダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)」は14日、披露したコレクションのうち「数点のルックをすぐに販売開始する」と発表した。
「トリー・バーチ(Tory Burch)」も足並みをそろえている。
また、「トム・フォード(Tom Ford)」は今シーズンのショーをキャンセルし、9月にはすぐに買えるコレクションとして披露する予定だ。
他にも、「トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)」や、英「バーバリー(Burberry)」も、同様のシステムを採用すると発表している。
SNSとショーの関係も変わってきており、ランウェイショーを一般消費者にも公開するブランドが増えてきている。
コレクション発表と販売開始とを同時期に設定することで、「ショーは商業的なイベントに変容し」、数字で成功を推し量る、単なるマーケティング手段の一つに過ぎなくなる、とマーシャル・コーヘンは説明する。
商業的な影響は?
新しいコレクションスケジュールは、同時に「H&M」や「ギャップ(Gap)」といった大手ファストファッション企業からの自衛手段にもなりうる。ファストファッションブランドの納期は非常に短く、他メゾンのファッションショーからアイディアを得て、すぐに発売してしまえる力がある。
今までは、6ヵ月のインターバルは「特に問題もリスクも無いとする見方が多かったし、何より生産期間を変えずに上手くやる方法が誰にも思いつかなかったというのがある」とレベッカ・ミンコフ(Rebecca Minkoff)はAFPに話した。
こうした文脈から、ミンコフは13日、2度目の16年春夏コレクションを発表した。昨年9月に既に披露したアイテムも取り入れたが、残りの新作モデルの大半は、アジアではなくアメリカ国内で緊急に生産したものだ。
それと同時に、バイヤーだけを招いて16年秋冬コレクションを極秘裏に発表。ショーとして公開されるのは9月のことになる。こうすることで、受注から販売までの生産期間は、今まで通り変更せずに済むというシステムだ。
「現行の生産サイクルを壊すことはしたくなかったので、何か上手い方法はないかと考えていた」と彼女。
財務を担当する兄のウリ・ミンコフ(Uri Minkoff)も、「オートクチュールがこのシステムを採用できるとは思えないが、プレタポルテの世界では、実際様々なレベルでの対応が行われている」と話す。
しかし、こうした変化は売上にどのような影響をもたらすのだろうか。
ウリ・ミンコフは直後に効果を実感したという。プロのバイヤーからの注文だけでも、先月は10%増加した。
一方で、ザック・ポーゼン(Zac Posen)はこの急激な変化を危惧しており、過剰な消費を促進する恐れがあると警鐘を鳴らす。
「ファストファッションが世界を駄目にするだろう。海の汚染もそうだ。近年では、海に捨てられる衣服の量は3倍にも4倍にもなっている」とAFPに語った。
しかし同時に、消費者自身の良識を信じているとも述べ、食品業界で既に動きが起こっているように、より社会や環境に配慮したアプローチが広まるだろうとしている。
by Thomas Urbain
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