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掲載日
2020/01/28
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「モードは死んだ」のか?

掲載日
2020/01/28

 環境問題が深刻化するなか、ひたすら消費するばかりのファッションにはたして意味はあるのだろうか?ファッションウィークを見る限り、新しい商品も新しいブランドも加速的に増え続けており、一見するとそこには何の変化も見受けられない。しかし一方で、こうしたファッションの在り方に疑問を投げかけるメゾンも出てきている。

Jean Paul Gaultier - Spring-Summer2020 - Haute Couture - Paris - © PixelFormula


 今回のオートクチュールシーズンでは、「納棺」という非常に象徴的なシーンが特に印象に残った。ジャン=ポール・ゴルチエ(Jean-Paul Gaultier)のキャリアを締め括った盛大なショーには、世界中のファンや業界人が集う。シャトレ座の大きな劇場で、モード界の"アンファン・テリブル(問題児)"が最後のオートクチュールショーを華々しく行った。
 
 ショーのオープニングを飾ったのは、60年代のファッション業界を描いた映画『ポリー・マグーお前は誰だ』だ。ウィリアム・クラインによる同作はカルト的人気を博しているが、ショーでは葬儀を描いた一場面が映し出された。登場人物は墓地でこう呟く。「パリは死んだの?つまり、オートクチュールは……」。続いてステージに現れた6人のダンサーは、実際に大きな黒い棺を抱えていた。

  また、メンズのランウェイにも興味深い演出は見られた。ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)は観客席をキャットウォークの上に設け、箱庭上の会場を見下ろすような造りにした。まるでモデルやルック自体がセットそのもののように、ファッションとの距離をあえて強調する手法は、既存のものの見方に一石を投じている。
 
 アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)手掛ける「グッチ(Gucci)」では、会場に設置された大きな振り子が危機感を煽る。「JWアンダーソン(JW Anderson)」のコレクションには燃え盛る家のモチーフをあしらったTシャツが登場したが、さらに客席に置かれたマネキンがジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の顔写真を付けて同じアイテムを纏うという皮肉の効いたセッティングも見られた。「住処が危険に晒されている」とアンダーソン。

Walter Van Bierendonck - Fall-Winter2020 - Menswear - Paris - © PixelFormula


 PLCコンサルティングのヘッドコンサルタント、パトリシア・レラ(Patricia Lerat)は、「人々は大きな変化の時が近づいているのを感じている。そして、恐れによって行動を抑制しているんです。あらゆるところにプレッシャーがある。私たちは崖っぷちにいるんです」と分析する。「ここ20年ほど、ファッション産業は過剰な生産を続けてきました。このようなシステムは今の時代には意味を持たない。大きな変化を前に、システム全体が進化しなくてはなりません。若いデザイナーは危機感を持っていて、新しいチャレンジに対しても積極的です」。

 ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)が発表した「W.A.R(Walter: about Rights)」コレクションは、ファッションに対しはっきりと「ストップ」をつきつける。前半のルックの多くは肩や靴に巨大な"トゲ"をあしらったもので、甲冑のようなフォルムのアイテムなども、終末的な世界観を感じさせた。
 
 さらに、後半にはいわゆる"サンドイッチマン"スタイルのパネルを着たモデルが続々と登場した。ベースのボディタイツには「MY PLANET」や「MY FUTURE」の文字が。パネルのメッセージは様々だが、「Stop buying fast cheap fashion now(安いファストファッションを買うのをやめろ)」や、「Save the planet(地球を守ろう)」、あるいは「I hate fashion copycats(ファッションをコピーする奴らが大嫌いだ)」といったものもある。
 
 今シーズンのパリは、特に非公式日程での参加が目立ち、公式のランウェイショー以外にもプレゼンテーションやショールームなど、いかに市場にブランドが溢れているかがうかがい知れた。

Prada - AW 2020/21 - Milan - - ph Dominique Muret


  「今の時代、クリエーションによるファッションというものは存在しない。ファッションは何より商品であり、ロゴだ。80年代には、夢を与えて『買いたい』と思わせてくれたデザイナーがいたが、それももう終わった」と話すのは、ベテランジャーナリストのアンティゴネ・シリング(Antigone Shilling)だ。
 
 ジャン=ポール・ゴルチエの「納棺」は、自身の退任だけではなく、大きな時代の終わりを象徴していた。イリュージョンで魅せるファッションは終わった。「ピッティ・ウオモ(Pitti Uomo)」でコレクションを発表したテルファー・クレメンス(Telfar Clemens)は、「アンチモード」を掲げる新世代のデザイナーだが、彼のランウェイは時代の空気を完璧に反映したものだった。キャットウォークとなった机にはワインの空き瓶や食べ残しが散乱し、まさに「宴の終焉」を告げている。

 

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