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掲載日
2020/04/13
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「ディオール」マリア・グラツィア・キウリ:「クリエイティビティが拠りどころ」

掲載日
2020/04/13

 新型コロナウイルスの感染拡大阻止を目的に、欧米を中心に世界の多くの国で都市封鎖や外出制限が行われている。クリスチャン・ディオール(Christian Dior)のクリエイティブディレクター、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)もその影響を受けている一人だ。「ディオール」のクリエイティブ部門で文化アドバイザーを務める娘のラケレ・レジーニ(Rachele Regini)と共にイタリア・ローマの自宅にとどまり、創作を続けている。
  
 「娘のラケレと一緒にいます。ローマの自宅に自主隔離しているわ。皆が一緒にこの非常事態を乗り越えようとしている。だからこそ、落ち着いて、創造の世界に没頭するのが大事だと思うの。本当に幸運なことに、私自身も、家族も友人も、健康に過ごせています」とキウリ。イタリアの自宅から本紙の電話インタビューに応じてくれた。

Dior Autumn/Winter 2020/2021


 「健康な状態で、自宅に居られるというのは本当にありがたいこと。自分たちの幸運を忘れてはいけないわ」と強調するキウリ。ローマ中心の歴史的な地区に位置するアパートを、娘のレジーニと共有している。
 
 ローマのイスティテュート・エウロペオ・ディ・デザイン(Istituto Europeo di Design)で学んだ後、1989年に「フェンディ(Fendi)」に入社したマリア・グラツィア・キウリは、その後アクセサリー部門で数多くのヒット商品を生み出すことになる。1999年からはヴァレンティノ(Valentino)社に関わり、ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)と共に「レッド・ヴァレンティノ(Red Valentino)」ラインのデザインを手がけるようになった。そして10年後にはデュオとして「ヴァレンティノ」全コレクションのクリエイティブディレクターに抜擢され、2016年からはクリスチャン・ディオール社でウィメンズのデザイナーを務めている。メゾン史上初の女性デザイナーとして、ムッシュ・ディオールから、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)、ジャンフランコ・フェレ(Gianfranco Ferré)といったクチュリエたちの仲間入りを果たした。

 「ディオール」ではフェミニズムの視線を取り入れ、ノンシャランでエレガントながらコンテンポラリーなスタイルを叶えた。アトリエと密に連携して仕事をするのが彼女流だが、現在の状況で、新しい働き方が求められている。
 
 「技術が進歩したおかげで連携を保っていられるわ。フェイスタイムでミーティングしたりだとか、スマートフォンを使って毎日仕事をしています。パリのアトリエにいるスタッフも自宅勤務しているけれど、進捗状況は写真やビデオで送られてくる。優れたアイディアは偶然同じ場所にいる人々との交流や会話から生まれるものだから、もちろん不便を感じることもある。でも、今の状況に適応しなければならないわね。私のチームもそう。自宅にいることでかえって普段にはないひらめきを得たりもすると思うの。チームとは定期的に話しているし、前よりもエネルギーに溢れていると感じるわ。クリエイティビティは、現実世界から逃避できる安全な場所。だからこそ、今余計にそれが特別な存在になっている」とマリア・グラツィア。
 
 「こんな状況で影響を受けない方が難しいわ。今起こっていることは本当に悲しい。けれど同時に、イタリアのファッションブランドの多くが、マスクや消毒液を病院向けに製造していることを誇らしく思っています。もちろんディオールもこうした取り組みを行っている。我々はイタリアにある様々な工場と近しく取引していますが、私の最優先事項は、彼らをサポートし、事態がある程度収束した後も支援を続けていくことにあります」。

Dior Autumn/Winter 2020


  遡ること一ヶ月と少し前、キウリが手がける「ディオール」ウィメンズ レディ・トゥ・ウェアのランウェイショーは、パリのチュイルリー公園を舞台に開催された。「Rivolta Femminile」と題されたステージでは、キウリ自身の青春時代から着想を得て、ブルジョワのコードに反骨精神を取り入れたコレクションを披露。会場にはキウリらしくフェミニズムのマニフェストが掲げられた。
 
 「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」が欠かせない今となっては考えられないことだが、狭い会場には2000人近いゲストが肩と肩を寄せ合うようにしてひしめいていた。しかし、キウリ自身は当時から事態の深刻さに気付いていたという。
 
 「最初に中国で感染が広がっているというニュースが入ったときから、事態は深刻だと考えていたわ。ちょうどこの間のショーの直前だったと思うけれど、仕事をしながらずっと心配していた」。
 
 その後、「ディオール」はイタリアで5月に予定していたクルーズショーの見送りを決定。さらに、フランスクチュール連盟は7月のオートクチュールシーズン中止を発表した。次にキウリのコレクションが見られるのは、9月の2021年春夏シーズンということになる。
 
 都市封鎖や外出制限を経て、今後ファッション産業のあり方にも変化が訪れるのだろうか?現在のシステムでは、ショーを見るために皆が国境を越えて移動する必要がある。
 
 「今のところは誰にもわからないでしょうね。けれど、新しい生き方にせかいが適応していく必要がある。ファッションも同じよ。少なくとも今後一定の期間はね。でも、どういう風に変わっていくのかを予想するのは難しいわ。だから今のところは、目の前の仕事を一つ一つこなしていって、創造を拠り所にするつもり。未来をどうこう考えて勝手に行動するのは賢明とは思えない。ただ、少しずつ順応して、その変化を受け入れる準備をすべきよね」。
 

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