2017/05/23
「エルメス」、アントワープでマルジェラの軌跡を巡る旅
2017/05/23
パリ北駅の電光掲示板に表示された電車の行先は、「le sens de l’objet(オブジェに宿るもの)」。「エルメス(Hermès)」が2017年に掲げたテーマだ。

受け取った招待状には逆さま(フランス語で「ア・ランヴェール(à l’envers)」)に文字が書かれていて、謎解きのように「アントワープにて(フランス語で「ア・アンヴェール(à Anvers))」と行先を示している。5月22日、「エルメス」は各国からジャーナリストなど240名をベルギーのアントワープに招いた。
ジェネラル・アーティスティックディレクターのピエール=アレクシス・デュマ(Pierre-Alexis Dumas)によると、ベルギー人デザイナーであるマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)、そして彼とオブジェとの特別な関係について考えたとき、アントワープという街が自然に浮かんだのだという。
マルタン・マルジェラは1997年から2003年まで「エルメス」でウィメンズウェアを手掛けていた。「H」の文字を描けるよう6つの穴が空いたボタンや、2重巻きベルトの時計、クロシェットキーリングなど、アイコニックなアイテムを創り出したのもマルジェラだ。

今回のイベントの主催者にはマルタン・マルジェラ自身も名を連ねており、監修も直接行っている。駅から車に揺られて着いた先は、サンフェリックス倉庫だった。2006年から街のアーカイブを保存している。
「この場所は大好きだね。僕にとってはアントワープの象徴だ」。マルタン・マルジェラと共に仕事をしていたボブ・ヴェルヘルスト(Bob Verhelst)はこう話す。
そこから長く続く白い廊下を歩むと、大きなホールに通された。レオタードとヌードカラーやブラックのタイツを纏ったモデルは、それぞれ言葉とジェスチャーによってマルジェラ時代の「エルメス」や彼自身のルックを表現し、架空のファッションショーを実現させている。

展覧会では、マルジェラが「エルメス」で手掛けたものと自身のメゾン向けに作り上げたものが並行して展示されている。「エルメス」向けのシンプルで洗練されたルックと比べ、自分のメゾンで発表したモデルをマルジェラ本人は「バロック」だと表現した。
最後に並べられた写真には、先ほどのパフォーマンスに出ていたのと同じモデルが写っていたが、今回は実際に服を纏っている、という寸法だ。

食事会は倉庫の回廊で行われ、Klezmicnoizのロマ音楽をバックに、黒い服と黒い手袋を纏ったスタッフがサーブした。
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