AFP
2016/05/03
「シャネル」のショーを迎える社会主義国キューバ ファッションに変化は訪れるか
AFP
2016/05/03
「シャネル(Chanel)」は5月3日、アメリカ大陸初の社会主義国であるキューバで、クルーズラインのランウェイショーを開催する。
アメリカとの関係改善に伴い、外交面でも商業面でも開かれつつあるキューバ。一連の国際的な文化イベントに、今回のショーが続く。

「キューバの豊かな文化と開放が、『シャネル』にインスピレーションを与えた」とメゾン側のコメント。
カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)の最新クルーズコレクションは、カリブの色彩と伝統的な「キューバの美意識」に着想を得たものになっているという。
オバマ大統領の訪問後、セレブリティや重要人物がキューバに世界中から足を運び、ローリングストーンズのコンサートも開かれた。また、「ワイルド・スピード」最新作の撮影も市内で行われている。
会場となる海辺のプラド通りには、ラグジュアリーと縁遠い寂れた古い建物が並ぶ。
「今回のショーは、キューバに向けたというより、ブランドの為のものになるだろう」というのが現地のデザイナー、Idania del Rioさんの意見だ。「キューバの人々には、ああいう商品はまだ早いのではないか」。
一方で、ショーには大きな関心を寄せていると話す。「4万ドルもする洋服がどんなものなのか見てみたい」。
キューバで最も有名なデザイナー、Raul Castillo氏は、「社会主義の国キューバでラガーフェルドのクリエーションを見ることができるなんて、夢のようだ」と語った。
「ぼろきれ」から「シャネル」へ
1959年のキューバ革命以来、カストロ政権は社会主義の原則を掲げ、衣服に至るまで平等であることを徹底した。
90年代になって規制が緩和され始めるまで、外国のブランドは手に入らなかった。
キューバ人作家Arturo Arango氏は、インターネット上に掲載した記事の中で、「規格化ほど醜いものは無い」と表現する。
「規格を押し付けることで、無気力と疎外感が生まれる。すべてが決定的に醜いものへと向かっていくのだ」。
支援を受けていたソビエト連邦が91年に崩壊したことで、キューバの経済は危機に陥った。人々は政府の運営する店舗で、輸入した古着を纏うことを余儀なくされることになる。
政権はこれを「リサイクル服(recycled clothing)」と名づけたが、一般の国民は公営店に買い物に行くことを「ぼろきれショッピング(rag-shopping)」と呼んだ。
革命前のキューバには、キャバレーやカジノにアメリカからのスターやギャングが訪れており、豊かなファッションの土壌がある。
「洋裁ができる人も多い。才能のあるデザイナーもいるし、自分の着たい服を買おうと皆頑張っている」とdel Rioさん。しかし、それには「時間がかかる」とも付け加えた。
キューバのファッションについて、年長のRaul Castillo氏は「これから花開いていくだろう」と話す。
「これからキューバは世界に開かれていく。『シャネル』のショーは非常に重要なイベントだ」。
同国のファッション産業の未来は、アメリカ側の禁輸措置の動向に掛かっている。
「経済制裁が完全に排除されて普通の国になれば、キューバはファッション業界をけん引する存在になれるだろう」とCastillo氏。
無断複製・無断転載禁止
© 2023 Agence France-Presse
この記事(もしくはこのページ全体)にある情報は、フランス通信社の権利下にあります。 フランス通信社の許可なくこれらの情報を複製・編集・転載・翻訳・商業利用・その他再利用することは硬く禁じられています。フランス通信社は、遅延・誤り・ 遺漏、あるいはこのページの情報を元に行われた行為やその結果に対して、一切の責任を負いかねます。