2019/03/07
4大ファッションウィーク総括:2019-20年秋冬トレンド
2019/03/07
2019-20年秋冬シーズンに、ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリの4大ファッションウィークで見られたのは、光と影の間で揺れる女性像だった。ストリートやスポーツウェアのトレンドは下火になり、レトロでクラシックなレディスタイルが復活。しかし、しなやかに落ちるロングドレスやチュニック、ワイドなフルレングスパンツ、コクーンコート、エコファーやボアに代表される温かな素材など、快適さを求める流れは継続している。また、こうしたフェミニンな要素は、よりダークかつアグレッシブなスタイルで、あるいは"身を守る服"といった形で表れる場合もあった。
1)ロマンティックロック

デリケートで非常にフェミニンな素材とハードなアティチュード、両極端な要素が同居するコレクションは少なくなかった。「プラダ(Prada)」、「アン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)」、「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」、「ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)」、「アルチュザラ(Altuzarra)」、「エルマンノ・シェルヴィーノ(Ermanno Scervino)」、「ジャンバティスタ・ヴァリ(Gianbattista Valli)」など、挙げ連ねればきりがない。
スーチング生地やスーツといったメンズワードローブ、あるいはカーキ、カモフラージュ、弾帯といったミリタリーウェアのコードを取り入れ、それをブラックのレースや透け感のある素材、シルク、サテンというセクシーなディテールとミックスする。よりハードなバージョンとしては、レザー、ビニール、スタッズ、マスク、チェーンといったロックでゴシックな要素が見られた。チョーカーやコンバットブーツ、ウエスタンブーツといったハードなアイテムを、シフォンやフローラル柄のドレスに合わせるルックも。
2)レザーコート

少しフェティッシュでパワフルなフェミニティという流れからレザーも多く登場したが、トータルルックで提案するデザイナーも。特にブラックレザーのコートは象徴的なアイテムで、「トッズ(Tod’s)」、「エルメス(Hermès)」、「アナキキ(Annakiki)」、「アレキサンダー・ワン(Alexander Wang)」、「アルベルタ・フェレッティ(Alberta Ferretti)」、「バレンシアガ(Balenciaga)」、「バルマン(Balmain)」、「Recostru」など様々なランウェイで見られた。中には、「セドリック・シャルリエ(Cédric Charlier)」のブルーグラデーションや「オフ-ホワイト c/o ヴァージル・アブロー(Off-White c/o Virgil Abloh)」のライムグリーン、「ラコステ(Lacoste)」のグリーンなど、意外なカラーで打ち出すブランドもあった。
3)マスク

戦闘服や防護服という観点から、先行きの不透明な今日の社会を反映したように顔を覆うマスクが登場した。「マリーン・セル(Marine Serre)」はタータンチェックのガスマスク、「グッチ(Gucci)」は白い仮面やヴェネツィアのカーニバル風のマスクにメタルの鋲が突き出たものをスタイリングしたほか、神々を象った「マニッシュ・アローラ(Manish Arora)」、動物を模した「Anton Belinskiy」も。他にも、スキーマスク風、フード一体型、スカーフなど、様々な形態で顔を隠すルックが見られた。
4)ブーツ、サイハイブーツ

定番のブーツも、特に今シーズンは高さとボリューム共に増してきている印象だ。サイハイブーツはスエード、ラテックス、テキスタイルとあらゆる素材で登場したが、「ジャクムス(Jacquemus)」ではカラフルなゴムを使用した。ぴったりとタイトなものから、ルーズにたるませるもの、あるいは非常にワイドなものまで様々なフォルムでランウェイを席巻。サイハイブーツだけでなく、ヒールのついたブーツをロンググローブに合わせるクラッシィなルックも目立った。
5)レトロ

ミディ丈のスカートに、セットアップ、カーディガンとのツインセットや、クラシックなコートなど、レトロなルックをパロディしたワードローブが次の秋冬の鍵に。ブルジョワ的なヴィンテージシックに、クールな要素を加えて現代風にブラッシュアップするスタイルが多く見られ、小物ではレザーグローブ、頭に巻いたスカーフや、「ニナ・リッチ(Nina Ricci)」、「ディオール(Dior)」のようなレトロなハットも登場した。
6)燕尾服とモーニング

レトロの波を受けて、燕尾服やモーニングコートといった古き良きフォーマルウェアがウィメンズのレディ・トゥ・ウェアに出現。「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)」では特にメンズのクラシックなスーツを再解釈したアイテムが多く見られたが、他にも「ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)」のブラックの燕尾服や、「セドリック・シャルリエ」ではベーシックなジャケットをラウンドヘムで仕上げたり、「クロエ(Chloé)」ではコートをカットすることでモーニングのシルエットを想起させるデザインも見られた。
7)ケープ

ショート丈から床へ尾を引く長いローブ状のものまで、ここ数シーズン継続してきたケープ人気がレトロのトレンドに後押しされた形で顕著になった。レングス、素材、シルエットも様々な形で登場している。
8)ダイヤ柄とダミエ

チェックのトレンドは相変わらず根強いが、そこから派生したダイヤ柄とダミエが増えつつある。道化師風のダイヤモチーフから、コントラストカラーを使った小さなダミエ柄まで、数々のコレクションで垣間見えた。
9)ネオンカラー

モノクロームのトータルルックが多くのコレクションに登場したが、ベージュやキャメル、ブラックなどベーシックでニュートラルなカラーのワントーンが目立つ一方で、「マックスマーラ(Max Mara)」、「アアルト(Aalto)」、「アクリス(Akris)」、「バレンシアガ」、「クリスチャン・ワイナンツ(Cchristian Wijnants)」といったブランドでは鮮やかな色彩が。特に「Marios」、「サンローラン(Saint Laurent)」、「マリーン・セル」で見られたように暗闇で浮き上がるネオンカラーは人気だった。中でもイエローとライムグリーンは次の秋冬のマストとなるだろう。
10)ウィンタースポーツ

雪山やウィンタースポーツからのインスピレーションも見逃せない。「シャネル(Chanel)」はスキービレッジをテーマに、ジャカードニットやレッグウォーマーといったアイテムを投入。「ベネトン(Benetton)」のナイロンスノーブーツに、「Angel Chen」、「Byblos」の毛足の長い素材、「クレージュ(Courrèges)」のファー付きフードはもちろん、レースアップと分厚いソールが特徴のマウンテンブーツも多く見られた。「Jarel Zhang」ではスキーブーツをそのままモデルにはかせるという試みも。定番のダウンは、単色から「ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)」のようなフローラル、メタリックバージョンまで、ブルゾン、ロングコート、ドレス、ジレ、ネックウェアまであらゆる形でランウェイに登場した。
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