2019/10/09
4大ファッションウィーク:ベストコレクション20
2019/10/09
ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリと4大ファッションウィークが終了し、合計400ものコレクションがショーやプレゼンテーションで発表された。
今シーズンのテーマとなったのは、サステナビリティ、フェミニズム、そしてインクルージョンだった。その中から特に印象に残った20のコレクションを紹介する。

「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」
マックイーン本来のゴシックなテーラリング、プリースト風のシックにケルト文化の影響を混ぜ込んだファッションは、非常に力強いものだ。デザイナーのサラ・バートン(Sarah Burton)は60人のアトリエチームを率いてフィナーレに姿を現し、長く尾を引く喝采に迎えられていた。
「バレンシアガ(Balenciaga)」
ステージングは今シーズン一番だった。教会と海岸を合わせたようなセットには、サファイアブルーのベルベットが敷き詰められ、個性的なキャストがウォーキング。「New Fashion Uniforms」と題されたコレクションには、ボリュームで遊んだオーバーサイズのアイテムが、しかしセクシーに昇華されて登場した。そこにロゴを混ぜ込むのがデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)らしい。
「ヴァレンティノ(Valentino)」
ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)は、グレー、エクリュ、ホワイトで陰影を表現した"グリザイユ"コレクションを披露してみせた。これは1986年にヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)が発表した「ホワイトコレクション」へのオマージュだが、若い世代もこのロマンティックな世界観を気に入ったようだ。
「ミュウミュウ(Miu Miu)」
ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)は、大胆で本能的、直感的なファッションを、パンチの効いたレディライクなルックに落とし込んだ。ラッフル、シフォン、エキセントリックなエンブロイダリーなどで飾り付けたアーティなアイテムが揃い、キャストのボールドな歩き方も合わせて面白いショーになっていた。

「Savage x Fenty」
ニューヨークでひと際光っていたのは、リアーナ(Rihanna)によるランジェリーブランド「Savage x Fenty」のランウェイだろう。ブルックリンで開催されたショーには、あらゆる体型・人種・サイズのモデルがジジ&ベラ・ハディッド(Gigi & Bella Hadid)姉妹と並んでキャットウォークに登場し、本物のインクルージョンを見せてくれた。
「マルニ(Marni)」
ブラジルで60年代に起こった芸術運動「トロピカリア(トロピカリスモ)」とフォービズム風のファンタジーが出会ったコレクションだった。クチュールと呼べるような見事なカッティングのブレザーをはじめ、カーディガンなどにもすべてハンドペイントで南国の花々が描かれている。衣服というよりアートピースのようなアイテムたちは、意外性のあるアイディアという点でも今シーズン頭一つ飛び抜けていた。
「ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)」
南仏出身、装飾の帝王クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)と、ベルギー流のダークな世界観を持つドリス・ヴァン・ノッテン。両者のクリエイティビティが見事に交じり合ったコレクションは、今年の目玉と言えそうだ。

「ヴェルサーチェ(Versace)」
ジェニファー・ロペスがサプライズ登場し、ドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)による伝説の"ジャングルドレス"20周年を祝った「ヴェルサーチェ」のランウェイは、間違いなく今季一番話題となったショーだろう。古代ローマのパンテオンを模したセットに、「ヴェルサーチェ」流のトロピカルなファンタジーが見事にマッチしていた。
「シモーネ・ロシャ(Simone Rocha)」
アイルランド伝統の「ミソサザイの日」に着想を得たコレクション。古着を着て麦わら帽子を被った人々が家々を回って踊り歌う行事だが、素晴らしいショーに落とし込んでいた。アシンメトリーなドレスにブルーのトレンチコート、幾重にも重ねたラッフルにパールと、美しいエレジーを奏でてみせた。
「トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)
アメリカの有色人種コミュニティで絶大な支持を集める「トミー・ヒルフィガー」は、長い間ヒップホップカルチャーに愛されてきた。多彩なルーツを持つゼンデイヤ(Zendaya)とのコラボレーションを披露する舞台には、アフリカ系アメリカ人音楽の殿堂であるアポロシアターが選ばれた。会場70年代のソウルミュージック風シックを取り入れたレトロなスタイルに生演奏、クラシックカーと、アメリカ文化のエッセンスを堪能することができた。
「ディオール(Dior)」
マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)はフェミニズムの急先鋒に立つデザイナーだ。今回のテーマはクリスチャン・ディオール(Christian Dior)の妹カトリーヌ・ディオール(Catherine Dior)で、レジスタンス活動家でありプロの庭師でもあった彼女にインスパイアされた素晴らしいコレクションを披露した。ラフィアやローシルクにデリケートなエンブロイダリーを施したニットのコルセットに、やはり同様の素材のジャカードで仕立てたジャケットを合わせたルックが印象的だった。ロンシャン競馬場に設置したセットには164本もの本物の木が置かれており、これらは全てその後パリ市の郊外に植林される予定だという。
「Leandro Cano」
プレゼンテーションとしては今シーズン一番の出来だった。スペインの神話と職人技、アートパフォーマンスを織り交ぜ、ロープ、セラミック、籠編み、ニット、エンブロイダリーといった工芸を使ってシュールレアリスティックな夢想の世界を表現した。魔女のようなガウンドレスや、ロープをあしらったドレスなど、クールでユニークな独自のクリエーションが興味深い。
「シャネル(Chanel)」
カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)亡き後ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)がメゾンで手掛ける3度目のショー。フェミニンかつフレッシュで、若々しいパリジェンヌ精神を感じさせた。セットもパリの屋根の風景を再現したもので、突然の闖入者もランウェイを台無しにすることはできなかった。
「JW アンダーソン(JW Anderson)」
マリー・アントワネットが60年代の「スウィンギング・ロンドン」時代に現れた、とでも言えそうな、非常に新しいコレクションだった。会場には、カナダ人アーティストのリズ・マゴー(Liz Magor)による、古い人形、ロープ、玩具などが透明のボックスに詰め込まれた作品が展示され、「エフェメラ・ファッション」を効果的に見せていた。

「ロエベ(Loewe)」
自身のブランドのショーを終えた10日後に「ロエベ」のランウェイをこなしたジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)。ベラスケスがイビサ島へ出向いたような、21世紀のクリノリンスタイルをアーティな脱構築ファッションとして披露してみせた。また、シーズントレンドに大きく影響を与えるだろうアクセサリーも見逃せない。
「リチャード・クイン(Richard Quinn)」
リチャード・クインも、一発屋で終わらない実力を見せつけた。オーケストラとコーラスの生演奏をバックに、エキゾチックなデビュタント風ドレスをはじめ、気の利いたイブニングドレスを多数提案。そこにブラックのラテックスレギンスブーツを合わせていた。
「マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)」
ケネディ時代の輝きや、60年代のロックスター、ドリス・デイのナイーブな美しさに、カーナビ―ストリートのクールを混ぜ込んだクレバーでゴージャスなコレクションだ。『マイ・フェア・レディ』風のドレス、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)を思わせるパワーパンツスーツ、ジャニス・ジョプリンのベルベットルダンゴトなど、マーク・ジェイコブスの豊富な知識やファッションへの溢れる愛が感じられた。
「The White Shirt Project」
多くのアーティスト、エディター、インフルエンサーたちがカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)にオマージュを捧げた。カールのアイコニックなアイテムだったホワイトのシャツをテーマに、「カール・ラガーフェルド」ブランド本社で限定コレクションが披露された。

「リック・オウエンス(Rick Owens)」
母親のルーツであるメキシコの文化を取り入れたリック・オウエンス。アステカ文明からインスパイアされたヘッドアクセサリーを、ジオメトリックなニットドレスにスタイリングしたルックや、鋭角なショルダーラインのスリーブレスコート、インターロックのニットドレスなどが目を引いた。ルイス・バラガン風のカラーパレットは、彼の祖母のメキシコ名にちなんで「Tecuatl」と名付けられた。ファッション史に残るショーだ。
「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」
「No Future」との言葉を背負ってフィナーレに登場した山本耀司は、気候問題に対する危機感を口にした。しかし、彼の提案する終末後の世界には、ドレープを描いたり皺加工の施されたドレスなど、目を奪う美しい衣服が登場する。詩的な感性で仕上げたコンセプチュアリズムという点では、お手本のようなコレクションだ。
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