2018/06/28
LVMHグループ、U2ボノ夫妻の「イードゥン」への出資を取りやめ
2018/06/28
LVMHグループは、U2のボノ(Bono)と妻のアリ・ヒューソン(Ali Hewson)が手掛けるエコロジカルブランド「イードゥン(Edun)」への資本参加を取りやめることを決定した。

グループの広報担当者も事実関係を認めており、「イードゥン」に同社の株式を売り戻す予定だ。
「イードゥン」はニューヨークのラファイエットストリートに直営店を構えていたが、それも先月閉鎖している。現在のところ、次期コレクションを生産する見込みはない。
「総合的なビジネスの観点から、『イードゥン』は事業を再編して次の段階に備えているところで、LVMHは保有する同社の株を創業者に売り戻す予定だ。創業者は『イードゥン』を通じてサステナブルなファッションを追求し続け、LVMHのサポートと献身に感謝している」とLVMHグループは声明で述べている。
2004年に設立された「イードゥン」は、長年経営不振が続いていた。本社のあるアイルランドの登記所によれば、2016年には530万ユーロ(約6億7500万円)の損失を計上していたという。創業から数えれば合計6580万ユーロ(約83億7900万円)の赤字となるが、純負債も昨年度中に4340万ユーロ(約83億7900万円)から4790万ユーロ(約61億円)へと拡大している。
アフリカの貿易と生産を奨励し、同大陸にポジティブな変化をもたらすべく創設された「イードゥン」だが、本質的には「株主ローン」の上に成り立っているブランドだと言えるだろう。
LVMHグループは、2009年に「イードゥン」への出資を開始、株式の49%を取得した。デザイナーもローガン・グレゴリー(Rogan Gregory)からシャロン・ワコブ(Sharon Wauchob)へと交代。
2013年にはクリエイティブディレクターにダニエル・シャーマン(Danielle Sherman)を迎えたが、彼女は2016年に退任し、以降はインハウスチームがデザインを手掛けてきた。
資本参加を表明した際、LVMHのベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長は、「『イードゥン』はエシカルファッションのパイオニアであり、グループはそのビジョンとエシカルな価値観を分かち合っている」と強調した。当時は、インド、ペルー、チュニジア、ケニア、ウガンダ、レソト、マガダスカル、タンザニアといった様々な国の小規模な工場で生産を行っていた。

「『イードゥン』の事業拡大と現地コミュニティに貢献できたことを誇りに思っている。LVMHは社会と環境に配慮したサステナブルな発展に取り組んでおり、それは傘下のブランドの発展においても重要な役割を担っている」と出資を決めた2009年のアルノー会長。
程なくして、創業者のボノとアリ夫妻はアニー・リーボヴィッツ(Annie Leibovitz)による「Vuitton Core Value」キャンペーンに登場。「イードゥン』の洋服を纏い「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」のバッグを片手に、プライベートジェットでアフリカに到着するシーンが広告になった。
LVMHの関係者は当時を振り返り、「イードゥン」は時代の一歩先を行っており、おそらく初のエコロジカルブランドだったのではないかと話す。アフリカの新興マーケットを理解し、ファッションにおいて徐々に拡大しつつあるエコロジカルな動きに対応するにあたり、「イードゥン」はグループにとって重要だという議論は、グループ幹部の間でも常に交わされていたという。
ファッション誌やメディアからも多数のサポートを受けてきた「イードゥン」。LVMHにとってはやはり業績不振がネックとなった。百貨店や専門小売店からの受注が十分でなかったこともある。
9年近く資本提携し、数年の赤字を経て、アルノー会長は、"オルタナティブなファッションのあり方"に関する授業料ならすでに十分払ったとの認識なのだろう。
(2018年6月28日現在、1ユーロ=127円で換算)
不許複製・禁無断転載
© 2023 FashionNetwork.com