2019/09/10
NYFW :「トム・フォード」のUSAアンダーグラウンド
2019/09/10
デザイナーのトム・フォード(Tom Ford)は、アメリカファッション協議会(Council of Fashion Designers of America)(以下、CFDA)会長としての職務と自身のブランドのランウェイ、二足の草鞋を見事に履きこなして見せた。

会場となったのはマンハッタン中心にあるニューヨーク地下鉄の廃駅で、小さなバーが入口になっていた。いつもと趣きを変えるにはうってつけだ。
コレクションのムードもアンダーグラウンドなものだった。フェティッシュな要素を上手くファッションに昇華してみせるトム・フォードの手腕は、最初の数ルックからも見て取れる。サテンのボリューミーなスカートとしなやかなシルクのトップスのほか、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)はファンキーなモヒカンスタイルの髪型で登場し、カイア・ガーバー(Kaia Gerber)はマイクロショーツと見事なカッティングのサテンのタキシードジャケットを纏っていた。
「多くの人がやっていることですが、僕も新しいシーズンに挑むときにはインスピレーションを得られるようなイメージを集めたボードからスタートします。具体的な内容を話すのは正直気乗りすることではありません。ココ・シャネル(Coco Chanel)は『クリエイティビティというのは、その源を隠す技のこと』だと言っていました。つまり、何かからインスピレーションを得て然るべきではあるけれど、それを自分自身のものにしなければならない。彼女はそういう意図を込めたのではないかと思います。僕自身、いつもそういう風に、服自体が語るようにしたいと思ってきました。でも、今シーズンは特に直接的なインスピレーションを与えてくれたイメージがいくつかあるんです」とプログラムノートに記したトム・フォード。

アンディ・ウォーホルとイーディー・セジウィック、チャックウェインの3人がマンホールから飛び出てきたような構図の有名な写真は1965年に撮影されたものだが、それが今回の鍵となるインスピレーション源だ。また、リュック・ベッソン監督の『サブウェイ』に出演したイザベル・アジャーニとクリストファー・ランバートにも着想を得たという。
ドウティ風のシルエットを描くジャンプスーツはブルーノシルクで仕立て、リネイスィ・モンテロ(Lineisy Montero)が着こなした。他にも、テッキーな素材のコバルトレザースーツが目を引いた。クラシカルな構成だが、そこに自信に満ちたセクシュアリティがプラスさられ、現代のロックなボンドガールに相応しいワードローブに仕上がっている。
同時に発表されたメンズのルックは、クラッシィかつファンタジックなスモーキングジャケットが登場し、レッドカーペットやパーティーにぴったりのトム・フォードらしいスタイルを見せてくれた。
ジェイコブ・バンクスによるブルージーなインダストリアルサウンドをバックに、かつてのプラットフォームの腐食したタイルや痛んだ柱の中を歩むモデルたち。最後は彫刻のように精密なカッティングのメタリックブラが多数登場した。
観客からはフォードに大きな拍手が送られた。
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