2019/09/11
NYFW:「Savage X Fenty」、リアーナがランジェリーを変革
2019/09/11
リアーナ(Rihanna)は9月10日、自身のランジェリーブランド「Savage X Fenty」の一大ランウェイショーをニューヨークで開催した。やりすぎとの批判が起こるかとも思われたが、蓋を開けてみれば非常に革新的なファッションイベントに仕上がっていた。ライブパフォーマンス、ダンス、凝ったセットによく出来たランジェリーは、ファンッション業界全体の変化にも一役買いそうだ。40分ほどの"ファッションレボリューション"は、非常にクレバーに作り上げられていた。

会場に選ばれたのはブルックリンのバークレイズ・センターだったが、会場前の雰囲気は決して上々というわけにはいかなかった。水も飲み物も与えられず待ちぼうけを食らう招待客。しかも、ファッショニスタやセレブリティがアマゾンの管理職連中に混ざってごった返すという有様だ。彼らはランウェイショーの客としては最も冴えない類いの集団だが、「ブルネロ・クチネリ(Brunello Cuccinelli)」をこざっぱりと着こなしたジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)CEOは一度話し合った方が良いだろう。さらに、携帯電話も預ける必要があり、エディターたちは頭を抱えていた。
しかし、一度イベントが始まればその印象は覆されることにある。オープニングではオールブラックのボディスーツをストッキングを纏ったリアーナが10人程のダンサーと共に登場し、素晴らしいダンスパフォーマンスを披露してくれた。セットはローマにある「フェンディ(Fendi)」本社を思わせるものだった。
次に現れたジジ・ハディッド(Gigi Hadid)は、まばゆいジュエリーを頭にあしらったファムファタールルックだ。

「ヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)」とは対照的に、リアーナは様々な体型のモデルを起用し、インクルーシブなショーを作り上げていた。トランスジェンダーや脚を切断した女性も含め、あらゆるサイズのあらゆる人々を受け入れるショーだ。
ミゴス、ホールジー、ビッグ・ショーン、エイサップ・ファーグ、ファボラスなど、ヒップホップスターや歌手の見せるパフォーマンスも圧巻だった。
また、アレック・ウェック(Alek Wek)、カーラ・デルヴィーニュ(Cara Delevingne)、ジョアン・スモールズ(Joan Smalls)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)といったトップモデルたちも多数姿を見せている。
ランジェリーはスポーティーな要素を取り入れ、ダークシャーベットなどオプティミスティックなカラーが目立った。しかし、ムードはアグレッシブでタフな印象だ。ロマンチックな要素は排除し、力強いフェミニティを表現した。

フィナーレで登場したリアーナはスピーチをしたり歌ったりすることなく礼をし、850人のゲストはみなスタンディングオベーションで迎えた。ファッション史に残るイベントだったという印象だ。確かに、延々と下着ばかりを見て一晩を終えたと言えばそれまでだが、クリエーションの現場に立ち会ったと感じる向きも多いはずだ。
ちなみに、9月6日にニューヨーク・タイムズ紙のビジネス欄トップを飾った記事は「ヴィクトリアズ・シークレットの問題 ジェフリー・エプスタイン以前にも(Victoria’s Secret Had Troubles, Even Before Jeffrey Epstein)」だった。
20年近くランジェリー市場を支配してきた「ヴィクトリアズ・シークレット」は昨年も北米で74億ドル(約7971億6100億円)の売上高を計上したが、まさに今危機に瀕している。文化的に問題のあるショーが、今度はアメリカ最大のセックススキャンダルと結びつけられたのだ。エプスタインは親会社エルブランズ(L Brands)の中心人物レスリー・ウェクスナー(Leslie H. Wexner)と繋がっていただけでなく、90年代半ばに「ヴィクトリアズ・シークレット」のスカウトをうたい、モデルに性的暴行を働いていたかどでも糾弾されている。
今回のショーで何かを強要されている女性はひとりもいない。9月20日からはアマゾン・プライム・ビデオでイベントの様子がストリーム配信される予定だが、「Savage X Fenty」は今後さらに成長し、新しいフェミニストの規範となっていくだろう。
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