2019/06/26
キム・ジョーンズが作る「ディオール」の"インスタントアーカイブ"
2019/06/26
「ディオール(Dior)」メンズのクリエイティブディレクターを務めるキム・ジョーンズ(Kim Jones)は、旅行にコラボレーションに編集業務にモデルと忙しい日々を送っている。先週はアーティストのダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)とタッグを組んだランウェイショーをパリで披露したばかりだ。さらに、『A Magazine 』最新号の編集者にも選ばれている。
7年間務めた「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」を去り2017年に「ディオール」に就任したキム・ジョーンズだが、「ディオール」ではさらに進化した洗練のクリエイティビティを見せている。
そんなジョーンズに、2020年春夏メンズウェアとアクセサリーについて聞いた。彼は今シーズンのコレクションを「インスタントアーカイブ」と呼ぶ。
「『ディオール』で働くなら、メゾンに合わせるんだ。いつも同じ手法を使うだけではいけない。自分自身に挑戦するんだよ。『ルイ・ヴィト ン』はラグジュアリーなトラベルレザーグッズブランド、というのが根底にあった。だからまったく違うものだし、どこに行ってもメゾンのコードを尊重しなくてはね。ここでの理念は、クチュール、テーラード、そしてエレガンスだよ」とジョーンズ。
今回のショーでアーシャムは、『DIOR』というレタリングで4つの巨大なコンクリートのオブジェを作りキャットウォークに配置した。さらに、エントランスにはコンクリート製の壊れた掛け時計まで用意されている。
「ダニエルの作品はずっと好きだった。彼は友人でもあるし、可能性を感じたんだ。どんな風に『ディオール』と結びつけられるのかというヴィジョンも見えた。彼は"今"という文脈の中に位置づけるやり方も上手い。クリスチャン・ディオール(Christian Dior)自身も、ピカソやダリ、マックス・エルンストと仕事をしていたしね」。
2020年春夏コレクションでは、アーシャム風の石膏のようにも見えるマイクロファイバーニットなどアーティスティックなピースから、スムースサテンのスーツといったクチュールライクなルック、トワルドジュイのジャンプスーツまで幅広いスタイルを見せた。
「トワルドジュイはある職人が作ったもの。東京で今でも着物を手描きしている人で、もうあの街には10人しか残っていないんだ。年間10点しか作らないから、すごく早い段階から予約したよ!」。
アーシャムとのコラボレーションでは、ネクタイピンのほか、ムッシュ・ディオールが愛したスズランを象ったメタルブローチや、ウォレットチェーン、リストバンド、キーチェーン、ダブルフィンガーリングもセメント調のライトグレーのトーンで登場した。また、マルク・ボアン(Marc Bohan)考案の"オブリーク(Oblique)"、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)が作ったニュースペーパープリントなど、過去のアーカイブから着想を得たデザインも。
「ディオール」メンズコレクションは、現代的かつエレガントで、イノベーションに溢れている。アクセサリーはコンテンポラリーでクールだ。ボンディングのサテン地はウォータープルーフになっていて、"カナージュ(Cannage)"や"オブリーク"のパターンが施されている。60年代の「クリスチャン・ディオール」メンズコレクションを思わせるものだ。さらに「リモワ(Rimowa)」とのコラボレーションでは、スーツケースやボストンバッグも提案している。
「『リモワ』とのコレクションは2回ドロップがある予定で、キャリーケースもあるよ。アレックス(アレクサンドル・アルノー(Alexandre Arnault)CEO)もこのアイディアに満足していた」。
「仕事をしながらいつも考えるんだ。20年後、30年後に残るものは何だろうって。『ヴィトン』でトランクを作って、パリで初めてのショーをやったときもね。『今の世代の展覧会というのは一体どういうものだろう?』と考えた。パリでやった展覧会(『Volez, Voguez, Voyagez (空へ、海へ、彼方へ──旅するルイ・ヴィトン)』展)を東京に持っていくことになって、いくつか新型のバッグを加えるように言ったんだ。それが"インスタントアーカイブ"になる。あるメゾンで仕事をするときに大事なのは、どんな伝説を残せるかということだ」とキム・ジョーンズ。
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