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掲載日
2019/09/24
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パリFW:「マメ」の柔らかな繭

掲載日
2019/09/24

 パリ ファッションウィークが、「マメ(Mame Kurogouchi)」のショーで開幕。「Embrace(包む)」をテーマに、軽やかなレイヤードを使い、ナイーブながらエレガント、モダンなワードローブを提案してみせた。

Mame Kurogouchi - SS 2020 - Paris


 これまで2度のプレゼンテーションをパリで発表してきた黒河内真衣子は、初の公式ランウェイデビューの舞台としてパリ大学薬学部の古い校舎を選んだ。回廊に夕暮れの風が吹き込むと、羽衣のように軽やかな衣服がはためき複雑なレイヤードを露わにする。

 日記や日々の生活といったパーソナルなインスピレーションを繊細でアーティスティックな方法で昇華するのが持ち味だが、今回のコンセプトは「異なる価値、異なる文化、異なる時代を融合させ」、「現代の美の概念の更新を試みる」と、より哲学的だ。

 オープニングのルックは夏の緑を思わせる鮮やかなグリーンのトップスとフルイドなパンツのスタイリングで、サテンとレースで仕立てたトップには草花のモチーフが躍る「マメ」らしいアイテムが登場した。その後もグリーンとホワイトというオーガニックな色使いを基調に、ゆったり体を包みストリングでシルエットを整えたアシンメトリーなドレスや、腕のシルエットを膨らませてフェミニンに仕上げたサテンのテーラードジャケットなどが続く。ブラレットやサイクリングパンツなど、スポーティなインナーで現代性もプラスしていた。

Mame Kurogouchi - SS 2020 - Paris


 しかし、中でも今シーズン目を引いたのはメッシュ素材のレイヤードだった。カラスよけや園芸ネット、漁網などから得たインスピレーションはメッシュのトップやドレスとなって、様々なアイテムや、時にはルック全体に薄い靄のようなベールを掛ける。

 後半には、和菓子の包み紙といった日本の伝統的なパッケージングに着想を得たというフィルム状のシルク素材を幾重にも重ねたスカートやジャケットが登場し、クチュールライクな存在感が目を引いた。他にも、ミントグリーンとベージュで仕立てたロングカフスのスプリングコート、たっぷりしたドレープがオーバーサイズのシルエットを描くジャカードのブルゾンなど、空気をはらんで柔らかく体を「包む」シルエットのアイテムが印象的だ。

Mame Kurogouchi - SS 2020 - Paris


 アイコニックなPVCのバッグにはフリンジとモチーフを施した新しいアイテムが登場したほか、今回はシューズで「トッズ(Tod’s)」と協業し、ポインテッドトウのパンプスをブラック、ネイビー、ホワイトの3色で制作した。

 「マメ」がプレゼンテーションではなく本格的なファッションショーを行うのは昨年3月の「At Tokyo」以来2度目。プレゼンテーション形式との違いを問われると「特に意識しなかった」としながらも、一日に何度もショーを行うプレゼンテーションと違い「一度しかできないので緊張感があった」と答えた黒河内。しかし"デビュー"に気負った様子はなく、「いつも以上にリラックスして挑めた」と落ち着いた様子を見せる。「私たちはとても時間の掛かるものづくりをしているので、ゆったりとした雰囲気の中で、洋服の豊かさを感じてもらいたい」。

 この11月にはタロウホリウチ(Taro Horiuchi)と共同で、アトリエプロジェクトと題した縫製会社の設立も予定している。単なるトレンドやマーケティングで終わらない「日本のものづくり」に対する真摯な姿勢は今回のコレクションにも表れていた。

 社会や政治に直接的な疑問を呈する若手デザイナーも少なくないが、あくまでもパーソナルで内向的なクリエーションを貫く「マメ」の世界観や日本的な日常感覚に共感する女性は多い。繭は中身を保護する殻であると同時に次なる成長へのステップでもある。国外の展開でも"羽化"できるかどうか、今後の動向が気になるランウェイとなった。

 

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