2019/03/19
東京ファッションウィーク Day1 、東京流のダークなフェミニティ
2019/03/19
東京ファッションウィーク2019-20年秋冬シーズンが開幕した。ブランド10周年を迎える「ドレスドアンドレスド(Dressedundressed)」がトップバッターを務めたほか、2度目の参加となる「ザ ダラス(The Dallas)」、そして「ジェニー・ファックス(Jenny Fax)」、「ティート トウキョウ(Tiit Tokyo)」などがランウェイを披露した。また、コシノジュンコは、福島県とのコラボレーションによる「フクシマ プライド バイ ジュンコ コシノ(Fukushima Pride by Junko Koshino)」で、東京では12年ぶりとなるコレクションを発表した。
「ザ ダラス」、ダークでパワフルな女性像
先シーズンはショーをスキップし、改めて2度目のランウェイに挑んだ「ザ ダラス」。今回「EMO」をテーマにしたデザイナーの田中文江は、昭和初期に建てられた洋館を舞台に感情を揺さぶるファッションを追求した。新作フレグランス「Selva Oscura」と同じく、ダンテの神曲に出てくる "暗い森"にインスパイアされたという。
アニマルプリントやパワーショルダー、ワイドベルトなど80年代風を思わせるバブリーでパワフルな要素を取り入れつつ、異素材やプリントのミックス、レイヤードなどを用いて現代的でリアルなワードローブに昇華。レオパードとパイソン柄をあえてかけ合わせたり、カットワークを施した幅広のベルトやブレスレットといった小物だけでなく、トランスパレントなブラウスの袖や、ディープグリーンのコート、ワンピースなどでも見られたレザー、ジャンプスーツやジャケットのファー使いなど、ハードな素材が目立った。ヘアメイクもソフトモヒカンやウルフヘアに力強いダブルラインを引いたパンキッシュなもので、足元にはレザーのサイハイブーツを合わせて媚びない女性像を演出している。一方で、会場とリンクするようなレトロなフローラルプリントやニットのコルセット、シフォンのラッフル、ボウタイなどクラシックでフェミニンなディテールも混ぜ込み、感情の揺れを表現した。定番の大ぶりイヤリングはさらにボリューミーに力強く進化。特に両耳を繋げたデザインが目を引いた。
ワールドでキャリアをスタートし、その後も様々な大手アパレルでデザインを担当した経験を持つ田中デザイナー。ブランドのファンは「トレンドを求めていない」と語っていたものの、ダークでパワフルなフェミニティへ向かう"今"の空気を敏感にかぎ取っている。 ランウェイならではのクリエイティブな世界観にコマーシャルなセンスをバランスよく落としこんでみせた。
「ジェニーファックス」、毒入りのおとぎ話
毎回シュールでノスタルジックな世界を披露してくれるシュエ・ジェンファン(Shueh Jen-Fang)。今シーズンの「ジェニーファックス」は、砂糖菓子のようなポップな少女趣味にシュールな毒を織り交ぜ、少し歪んだおとぎ話を表現した。スタイリングは先シーズンに引き続きロッタ・ヴォルコヴァ(Lotta Volkova)が手がけている。
着ぐるみのような丸いシェイプのオーバーサイズパーカでショーは幕を開けた。ピンクやベビーブルーのレースやサテン地、フリルにラッフル、ギャザーとふんだんに甘くガーリーな要素を盛り込む一方、ずり落ちたスカートやトップスの空きから下着が覗くようなディテールの危うさ、アシッドデニム使いや太いストライプのソックスを合わせた足元のパンキッシュな力強さが、「可愛い」だけで終わらない独特の世界観を作り上げている。
結婚行進曲に合わせて登場したラストのルックはそれこそウェディングを思わせるオールホワイトのドレスだったものの、頭にティアラのように乗せた熊の新郎新婦のフィギュアは、よく見れば溶けた新郎を新婦が踏みつけにしているようにも見える。「めでたしめでたし」で終わりそうにないお伽話は、甘いだけではない一種の"ガールパワー"とフェミニズムを感じさせた。
不許複製・禁無断転載
© 2024 FashionNetwork.com